研究課題/領域番号 |
20H00365
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高峰 愛子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (10462699)
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研究分担者 |
飯村 秀紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 再雇用職員 (10343906)
田島 美典 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (20821838)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー分光 / LLFP / 核データ |
研究実績の概要 |
原子力発電所などで発生する使用済み核燃料中の長寿命核分裂生成物(LLFP)をいかに処分するかは世界的な最重要課題の1 つとなっ ている。使用済み核燃料の最終的な処分で問題となる長寿命核分裂生成物の長寿命核分裂生成物の半減期は、極めて重要な核データであるにも拘らず、測定例は古い上に少ない。本研究では、半減期の決定に必要なパラメータである原子数を高分解能レーザー分光法であるコリニアレーザー分光法で測定し、同重体による誤差を排除する。まずは、Zr-93を測定対象核とし、その長寿命不安定核に的を絞った核反応で試料を作製することにより、試料中に含まれる不純物核種を低減することを目標とし、理研のAVFサイクロトロンで15MeV/uに加速したdビームをBeターゲットに照射し発生させる中性子をNb-93ター ゲットに照射することで起こる(n,p)反応で生成されるZr-93の量を見積り、当該試料を作製するビームタイムを申請した。 並行して、コリニアレーザー分光装置の開発を進めている。まず、長時間安定に駆動する全固体レーザーを導入した。イオン源として天然ZrターゲットをレーザーアブレーションすることでZrイオンビームを生成し、アブレーションレーザーに同期して短時間のみにZr同位体イオンからの発光を観測することで、レーザー分光スペクトルにおけるバックグラウンド低減を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zr-93サンプル生成のビームタイムを申請し、24時間の照射ビームタイムを得ることができた。 導入した全固体レーザーは大きなトラブルもなく目論み通り日常的に安定に駆動している。また、ヘリウムガス中でのレーザーアブレーションと高周波イオンガイドを組み合わせたイオン源において、アブレーションターゲットとして金属単体のニッケル、ジルコニウム、銀、タンタル、タングステン、さらに化合物のフッ化バリウムを用いた際、アブレーションレーザーパルスあたり、一価の金属イオンを10万から1000万個程度引き出したことを、論文にまとめた。更に、真空中でのZrアブレーションとそれに同期したコリニアレーザー分光により、核スピンが0の安定同位体である、質量数が90, 92, 94の偶々核Zr一価イオンに対し、357nmの遷移の分光スペクトルの観測に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
理研のAVFサイクロトロンで15MeV/uに加速したdビームをBeターゲットに照射し発生させる中性子をNb-93ター ゲットに照射することで起こる(n,p)反応でZr-93試料を作製する。照射したNb-93ターゲット中で短寿命Nb-92m放射能が減衰するのを数ヶ月間待った後、溶解してイオン交換法でZrを化学分離する。試料のγ線・X線をGe検出器で測定することで化学分離で除ききれなかった不純物(Nb-93m,N b-94など)による放射能を確認する。不純物が多い場合は化学分離を繰り返して、不純物の放射能をZr-93の放射能の1/100以下にする。2021年度はテスト照射として1日間の照射実験を実施する。試料のβ線を液体シンチレータで測定してZr-93の生成量を把握し、予想収量と比較する。これと並行して、理研に既設 のコリニアレーザー分光装置の開発を進める。Ba安定同位体やZr安定同位体を用いて装置の最適化を行う。現在レーザーアブレーションでZrイ オンを生成しているが、放電型イオン源の改造を行いZrを効率的にかつ安定に生成できるようにし、微量の塩化ジルコニウムから得られるZrイ オンビーム量を測定する。また、主にBaイオンビームを利用して、ビーム量と共鳴ピークの大きさを精査する。また、Zrイオンのどの遷移をレーザーで励起するかによって測定感度や同位体シフトが大きく異なるので、多数の遷移を実際にレーザー励起して、測定感度が高く、かつ同位体シ フトが大きな遷移を選定する。測定結果からZrイオン光学転移の電子因子を決定する。
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