研究課題/領域番号 |
20H00367
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
朝倉 清高 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60175164)
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研究分担者 |
増田 卓也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (20466460)
三輪 寛子 北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (90570911)
和田 敬広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10632317)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線吸収分光 / 燃料電池 / 構造解明 / オペランド |
研究実績の概要 |
SDGsを達成するために、化石燃料に代わり、CO2を発生しない動力源として期待される燃料電池のさらなる高度化が求められている。高度化のためには、カソード電極触媒で使われる高価なPt量の低減と高機能化が必要であり、合金触媒の研究がされている。こうした研究を基礎で支えるのが、原子レベルの合金触媒の構造と電気化学反応特性に関する知見である。単結晶を用いて燃料電池触媒をモデル化し、電気化学反応の起こっている条件で、電解質に接するPtの固液界面における構造を規定するオペランド解析を行い、合金化の効果を調べるのが本研究の目的である。Ptと第2成分の金属との相互作用―電子効果と幾何効果―を分離して調べる。具体的には、Au上に第2金属を蒸着し、第2金属の厚みを変化させることで、第2金属間の結合距離を変化させ、その上にのったPtの結合距離と活性を追跡することで、合金効果がPt-Ptの結合距離短縮効果なのか電子移動によるのかを明らかにする。これを達成するには超高感度オペランド局所構造決定法であるBCLA(Bent Crystal Laue Analyzer)+BI(Back Illuminated)-XAFS(X-ray absorption Fine Structure)法を開発することが必要である。そこで、BCLA+BI-XAFS法の開発を行い、Pt合金の構造(結合距離や電子移動)と活性との相関を得る。とくに、重要な酸素還元反応の活性について調べる。同時にXAFSの解析法の提案も行う。こうして得られた知見は、新たな燃料電池開発に必要なPt合金燃料電池触媒の新しい知見を得ることができ、より高活性な燃料電池触媒材料の開発に必要な設計指針を与得ることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)COVID-19の蔓延のため、出張を必要とする放射光実験が計画された1/3しかすることができなかった。しかし、その限られた時間に研究を集中し多くの成果を得ることができた。BCLA+PTRF-XAFS(Bent-Crystal Laue Analyzer empowered Polarization Dependent Total Reflection Fluorescence X-ray Absorption Fine Structure) 法の確立に取り組んだ。 BCLA+PTRF-XAFS法の高感度化を実現するためにすでに研究室にあるステージ類を組み合わせてBCLAの焦点列と光軸を精密にあわせる調整器具を作製した。また、その調整法を確立し、高感度化を実現した。成果について論文として発表した。 溶液中でのBCLA+PTRF-XAFSの高感度測定の実現可能性を確かめるとともに、問題点も明らかにした。 (2)Au(111)表面へのCoの蒸着と超高真空下でのキャラクタリゼーションを検討した。 今年度購入する蒸着装置を用いて、Coを1から5層程度を制御してAu(111)表面に蒸着しようとしたが、Coの原子上平坦な薄層を作ることが難しいことがわかった。本研究を達成するためにCoのかわりにPdを用いることとして検討をしている。一方、Au(111)のPtについては、ガルバニック置換法で薄膜作製が可能であることを確認した。この成果については公表準備中である。Pt薄膜の表面構造を全反射法で使うことができるかという検討も行った。 (3)PtAuのナノ粒子の研究を行い、新たな構造が安定化することを見いだした。本成果についての発表も準備中である。 (4)DFT計算を行うための高性能計算機を購入し、計算開始の準備をした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)PdをAuにガルバニック置換法で析出し、STM,LEED,XPSでキャラクタリゼーションをおこなう。Pdの総数を変化させて、それぞれの構造や電子状態の変化をしらべる。また、総数によるモルフォロジーの変化も調べる。上記のサンプルに対して、オペランド偏光全反射蛍光XAFSを行う。とくに電位をかけたときに膜が安定であることを確かめる。また膜の厚みとともに、Pdがどう変化するかを調べる。予想としては、1層の時はAuと同じPd-Pd結合距離となるが、総圧が増えるに従い、本来のPdーPd 結合が実現する。予定通りのPd構造ができている時は、さらにPtを載せて、その構造を検討する。 (2)一方、Pd薄膜の構造が予定通りにできていないときは、Pdの蒸着法を変更する。 (3)電子状態についてはHERFD(High Energy Resolution Fluorescence Detection)-XANES(X-ray Absorption near edge structure)により検討する。Pdの層数や電位依存性などを調べる。これにより電子状態に関する情報を得て、密度汎関数(DFT)計算と比較する。DFT計算以外にも多重散乱を用いた手法により、HERFD- XANESの形状計算をこのない、吸着種や構造に関する情報を得る。 (4)以上の構造や電子状態の明らかにすることで、Ptの状態をキャラクタリゼーションし、電気化学反応活性との相関を得る。このときに回転電極を用いて、酸素還元活性を調べる。 (5)以上の結果を基に、作業仮説を提案し、新しい高活性触媒の開発に必要な新概念と来年度以降の研究展開に資する。
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備考 |
目標、成果についてまとめた
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