本研究では、室温で半永久的に蓄熱できる物質の開拓と、望みのタイミングで熱エネルギーを取り出す方法の開発を目的としている。金属錯体を対象とし、第一原理計算により電子状態およびフォノンモードを計算して熱力学パラメーターを見積もり、統計熱力学計算により巨大な温度ヒステリシスを設計して、物質合成の指針を与えるとともに、熱を取り出すための外部刺激について検討を加えることが計画されている。 一次相転移を示す金属錯体や無機物質のライブラリーの中から、量子化学、熱力学、統計力学的計算によって候補物質を絞り込むことで、合理的、効率的に物質設計を行う指針が導出されている。その学術的意義は認められる。また、熱エネルギーを長期に保存し、自在に取り出す手法の開発は、エネルギー資源の有効利用に資するとともに、物質科学に新しい合成戦略を与えることが期待される。
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