研究課題
本研究では、独自に開発を進めてきた「強レーザー場超高分解能フーリエ変換分光法」 の計測精度を2桁向上させ、分光計測によって達成できる原子や分子 の遷移周波数の計測精度を 9桁まで高めるため、長尺高精度干渉計を構築し、高強度超短パルスレーザー光によるポンプ・プローブ計測を行う。イオン収率の遅延時間依存性のフーリエ変換(FT)スペクトルから、原子、分子、分子錯体の中性およびイオン種の回転、振動、電 子状態の準位エネルギーを高精度で決定する。 イオン収率FTスペクトルの強度と位相に基づいて、分子および分子錯体の振動モードが励起さ れた場合のそれぞれの振動モードの振幅と位相のダイナミクスを明らかにする。2020年度には、独自に開発を進めてきた「強レーザー場超高分解能フーリエ変換(SURF)分光法」による研究を推進するために、掃引距離 5 m の長尺高精度干渉計を構築し、その性能評価を行なった。また、本長尺干渉計を用いて、高強度超短パルスレーザー光によるポンプ・プローブ計測の試験を行なった。また、FPGAを搭載したトランジェントデジタイザとA/Dコンバータを同期したデータ取得システムを構築することによって、イオン収量を最大16チャンネル同時取得し、遅延時間を毎時3 m(10 ns相当)の速度で掃引することが可能となった。既存の干渉計を用いた計測から、Ar、KrのSURF分光計測では、遅延時間を500 ps掃引することによってAr,Krイオンのスピン軌道分裂が7桁の周波数精度で得られることがわかった。クラスターのSURF分光を実現するため、別途開発したパルスノズルをSURF分光装置に導入した。そして、分子・原子二量体が生成する条件の最適化を行なった。更に、アセトニトリルのイオン化過程について計測を行い、搬送波位相に対する各解離チャンネルの収量を求めた。
2: おおむね順調に進展している
2020年度の研究開発において、掃引距離 5 m の長尺高精度干渉計を構築した。この干渉計は、真空中に光学遅延ラインが設置されており、遅延時間を毎時3 mの速度で掃引可能である。また、FPGAを搭載したトランジェントデジタイザとA/Dコンバータを同期したデータ取得システムを構築したことによって、飛行時間質量スペクトル上に現れるイオン収量を最大16チャンネル同時取得することが可能となった。これによって、同位体やフラグメント種など、モニターするピークが複数存在するような原子、分子イオン種のデータ取得において、大幅な効率化が見込める。クラスターのSURF計測の状況として、既存の干渉計を用いてAr、KrのSURF分光計測を行い、Ar,Krイオンのスピン軌道分裂がの周波数精度を7桁精度で得られることがわかった。また、原子・分子クラスターのSURF分光を実現するため、別途開発したパルスノズルをSURF分光装置に導入し、Ar二量体、および酢酸2量体が生成する最適な条件が得られた。
2021年度には、この長尺干渉計を用い たSURF分光に着手し、掃引距離に対する分解能向上について評価を行う。具体的には、既知の資料について長尺干渉計を用いたSURF分光を実施し、長尺スキャンを行う上での問題点やデータ解析において必要な点などの洗い出しを行う。また、SURF分光において、周波数の決定精度において、ACシュタルクシフトが影響を与えるため、3次の自己相関計測光学系を構築し、数サイクルパルスのパルスコントラストを評価する。得られるパルスコントラストから、SURF分光におけるACシュ タルクシフトの大きさを求める。また、パルスバルブを用いてサンプルの速度を変えながらSURF分光を行うことによって、ドップラーシフトの大きさを評価する。SURF分光法の更なる周波数精度の向上のためには、精度の高い周波数標準の導入が必要と なる。周波数コムレーザーを用いた高精度周波数標準の試作に着手する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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