研究課題/領域番号 |
20H00372
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 正明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60181319)
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研究分担者 |
石内 俊一 東京工業大学, 理学院, 教授 (40338257)
平田 圭祐 東京工業大学, 理学院, 助教 (80845777)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 赤外分光 / 分子認識 / レーザー分光 / 受容体 / ペプチド |
研究実績の概要 |
神経伝達過程は受容体が特定の神経伝達物質を分子認識することで制御されている。その分子認識は鍵と鍵穴と呼ばれ受容体のポケットと神経 伝達物質の形や表面電荷の相補性に起因するとされている。しかし受容体も神経伝達物質も柔軟性を有する分子であり、柔らかな分子同士がな ぜ「鍵と鍵穴」と言われる精密な分子認識を行えるのか明確に答えることは難しい。そこで本研究は分子間相互作用を最も正確に調べられる気 相分子分光法をこの問題に適用する。受容体の分子認識を司る局所構造ペプチド(受容体ポケット)を取り出し、種々の分子との分子間錯体を形 成させ、エレクトロスプレー冷却イオントラップ分光法を適用して、赤外・紫外スペクトルによりその構造を解析する。これにより、認識され る分子のみならず、認識されない分子が結合することによる受容体ポケットの構造変形を解析し、柔らかな分子同士の分子認識機構を分子間相互作用の観点から解明する。この目的のため、種々のリガンド分子に対するアドレナリン受容体の分子認識を、アドレナリン及びその類縁分子のフェノールOH基を改変した種々のリガンド分子の複合体に対して冷却イオントラップ分光を適用した。さらに、種々のα-及びβ-アドレナリン受容体のカテコールOH基認識部位の部分配列ペプチドとアドレナリン/イソプレナリンとの複合体に対して冷却イオントラップ分光 を適用した。以上により、分子認識は,SIVSFの2つのセリン残基の相対配置がリガンド分子のフェノールOH基との相互作用に大きく影響を与えていることを明らかにした。これを実行するため、四重極質量分析器を新たに導入し,冷却イオントラップで生成したタグ分子付きのイオンをサイズ選別できる様にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の、1)種々のリガンド分子に対するアドレナリン受容体の分子認識、2)イソプレナリンに対する種々のアドレナリン受容体の分子認識、4)装置の改良に着手して順調に成果を出している。3)非天然受容体ポケットの分子認識能の検証に関してはバンド帰属を正確にする上で同位体効果を実施したいが、コロナの影響で同位体置換したアミノ酸の入荷が大幅に遅れており、この部分が不可避的な条件で遅延している。また、装置改良は設計段階での精査により従来の線型飛行時間型質量分析器をリフレクトロン型に改造することが最善と判断し、方針を変更して継続している。一方、イソプレナリンはアドレナリンの代用となるものであり、可能なものはアドレナリンを直接使用して研究を遂行した。これはある意味想定以上であるが、同位体置換したアミノ酸の入手遅れにより同位体効果を実施できていないことやや装置改良の継続のため、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況に対応して以下の2つを遂行する計画である。 a) 装置改良 昨年度,冷却イオントラップ後段での質量分析装置の改良を始めたが,当初考えていた方式だと目的達成が困難であることが判明し,別の方 式を検討した。その結果,従来の線型飛行時間型質量分析器をリフレクトロン型に改造することが最善策であるとの結論に達し,改造に着手し た。本年度は,装置の組み立てや制御系を製作し,2重共鳴分光による異性体選別した分光スペクトルの測定を実現する。 b) 非天然受容体ポケットの分子認識能の検証 種々のアドレナリン受容体の多くはS□□SFという配列を保存しており、□部分のアミノ酸残基によって認識するリガンド分子が異なる。こ こに天然には存在しない配列を導入した場合に種々のリガンドに対する分子認識能がどの様に変調されるかを検証する。これにより、なぜ天然 に存在する配列が進化の過程で選ばれたのかを分子論的に解明する。また,外国人研究協力者と共同で研究を進めることで,研究を加速する
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