研究課題/領域番号 |
20H00379
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20372724)
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研究分担者 |
林 宏暢 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00736936)
松尾 恭平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00778904)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前駆体 / アセン / 光反応 / ポルフィリン / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
π共役拡張芳香族化合物の合成法の確立と電子構造の解明、結晶構造制御は、ナノカーボン材料から低分子有機半導体まで、幅広い芳香族化合物の基礎学理の深化と有機エレクトロニクスの発展において極めて重要である。我々オリジナルの前駆体法は、従来法では合成が困難な、難溶または不安定なπ共役拡張芳香族化合物を、溶媒に可溶な前駆体として合成・精製し、最終段階で光・熱などの外部刺激により定量的に目的生成物へと変換する手法で液体・薄膜・固体・マトリックス中・気相・超高真空下基板上で進行する。本課題ではこの前駆体法を最大限に活用し、合成法の開発と結晶構造制御の2つの側面から研究を推進している。 合成法の開発では、A-D-A型の新しいp型材料、n型材料の合成に着手し、現在ルートの改良を行っている。これら化合物の合成に成功し十分な量のサンプルが得られたら、結晶構造制御と塗布プロセスによる有機薄膜トランジスタの評価を行う予定である。高次アセンが環状に繋がったシクラセンの合成においては、その前駆体である窒素含有アザシクラセン前駆体の合成に成功した。 一方前駆体の単結晶にレーザー光を照射することで、酸化に対して不安定なヘプタセンに変換することに成功し、吸収スペクトルでその存在を確認した。通常これら不安定な高次アセンは、極低温の不活性ガスマトリックス中や、超高真空下での基板上合成など、特殊な合成条件が必要とされるが、大気下室温での変換に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費初年度である本年度は、新しい化合物の合成に着手した。新規A-D-A化合物をデザインし合成を進めているが、AとDを連結するステップの収率が上がらず、改良を進めている。一方、n型材料を志向した、ポルフィリンのメソ位に窒素を導入したジアザポルフィリンにTIPS基を導入することに成功した。これまで報告されていたアリール置換ジアザポルフィリンに比べ、収率が低いため、条件検討を続けている。 一方、シクラセン前駆体の合成法開発では、いくつかのブレイクスルーにより、低収率ながら合成に成功した。今回溶解度を向上するために置換基を多く導入し、いわゆるフラスコ反応でのシクラセン前駆体に成功した。一方、これら化合物は置換基の立体障害により基板上合成には適しておらず、さらなる改良が必要である。 以上より、総じて、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
A-D-A化合物の合成ルートの開発では、引き続き検討を重ね合成できたものから順次、溶液プロセスによる成膜、薄膜構造解析、FET特性の評価を行い、p型、n型材料合成へのフィードバックを行う。さらにポルフィリンのメソ位に窒素を導入したジアザポルフィリンにおいても収率向上を第一目標とし、その後成膜、薄膜構造解析、FET特性の評価を行う。 シクラセン前駆体の合成に関しては、環の大きさの調整、置換基検討を行い、基板上合成に加え、環状化合物の溶液中の分光特性評価を行う。
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