研究実績の概要 |
多様なガス雰囲気に対する化学―物理情報変換を可能にする環境応答型多孔性磁石を提案することを目的とする。本年度は、ゲスト誘起結晶―結晶転移を起こす新規の錯体格子の開発とゲスト分子に依存した動的な電子移動の解明、多様なゲストおよび混合比に対する応答性について研究を行った。特に前年度から以下の2つのテーマを設定した:1)空気の主な組成ガスである酸素、窒素の混合ガスによる磁気相変換の検討、2)アセチレンおよびエチレン、エタン吸着による磁気相変換の解明。それぞれ以下のように、非常に興味深い結果を得た。これらは、本研究領域における大きなブレイクスルーとなる成果を含んでおり、今後さらに継続して研究を展開していく予定である。 (1)酸素、窒素、二酸化炭素をそれぞれ純ガス下で吸着する二次元層状フェリ磁性体(Nat. Commun. 2018, 9, 5420)について、酸素と窒素の混合ガスにおけるガス吸着選択性と磁気相変換を検討し、純窒素下のフェリ磁性相から純酸素下の反強磁性相まで、ガス混合比により変化することが明らかとなった。導入ガス比に対する吸着ガスの比率は、酸素低濃度時の方が酸素選択性は高く、酸素高濃度時(80-―90%)で選択性は逆転した。 (2)二酸化炭素とアセチレンは、速度論的サイズが同じであり、吸着稼働温度もほぼ同じである。しかし、吸着現象は大きく異なり、二酸化炭素とアセチレンの違いによる物性制御を捉えることは、化学的外場制御を考える上で非常に興味深い。また、エチレン、エタンとC2化合物であるため、それらの違いもターゲットに入る。これまでに報告した二酸化炭素を吸着する鎖状物質及び二次元層状磁石などについてこれらC2化合物について吸着挙動を調べ、既に幾つかの物質で二酸化炭素吸着とは大きく異なる新しい吸着挙動と磁気相変換挙動を示すことが明らかになった。
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