研究実績の概要 |
エナンチオピュアな配位子SS-cth(cth = 5, 5, 7, 12, 12, 14-hexamethyl-1, 4, 8, 11-tetraazacyclotetradecane,)を有する新たなコバルト錯体を設計し、極性構造を有し金属配位子間電子移動に基づく電気分極変化を示す単核錯体の開発を目指した。今回合成した物質は[Co(SS-cth)(phendiox)](PF6)0.5EtOHと[Co(SS-cth)(phendiox)](AsF6)0.5EtOH である(H2phendiox = 9, 10-dihydroxyphenanthrene)。結晶構造解析から極性構造(P21)を有することを明らかにした。また、磁性の測定から、原子価異性現象が190 K付近で誘起されることを示した。さらに、金属配位子間電子移動に基づく電気分極変化を示す[CoGa]複核錯体、[(Co(RR-cth))((Ga(SS-cth))(μ-dhbq)](PF6)3 (dhbq = dihydroxybenzoquinone)、の開発を行った。[CoGa]複核錯体は極性結晶中で分子配向が揃っており、金属配位子間電子移動の方向がb軸の向きであることを明らかにした。原子価異性は220 K付近で誘起された。焦電測定より原子価異性に基づき電気分極が可逆にスイッチすることを明らかにした。さらに、光により原子価異性が誘起され電気分極が変化することを示した。また、[FeCo]複核錯体、 [(Fe(RR-cth))(Co(SS-cth))(μ-dhbq)](AsF6)3を開発し、磁場制御を検討した。[FeCo]複核錯体は約55 Kでスピン転移が誘起され、電気分極変化を示した。さらにパルス磁場に応答し電気分極変化を示すことを明らかにした。
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