研究課題/領域番号 |
20H00401
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20288559)
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研究分担者 |
鈴木 一正 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (20805618)
岡田 健司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30750301)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属有機構造体 / 配向薄膜 / エピタキシャル / 電気伝導 / 熱伝導 |
研究実績の概要 |
異なる骨格構造を有する金属有機構造体に関して、エピタキシャル成長による配向薄膜や独立膜の作製手法を確立した。金属水酸化物を基板として用いたヘテロエピタキシャルアプローチの汎用性と有用性を示すことができた。このために、大面積で配向した多結晶体として、結晶構造に依存した異方的な物性をマクロな薄膜や独立膜として測定可能となった。このような試料を用いて以下の結果を得た。 (1)配向Cu(OH)2 nanobelts薄膜を前駆体としてCu系MOFをエピタキシャル成長させる手法により,面外・面内方向共に配向したCu3(BTC)2薄膜を実現した.Cu3(BTC)2においては,{111}面上にCu-carboxylate結合が並んで存在しているCu(OH)2との界面において格子整合性かつCu(OH)2のCuサイトとCu3(BTC)2のCu-carboxylate結合のCuサイトの位置整合性が取れる結晶方位が存在することから,Cu3(BTC)2においてもエピタキシャル成長が可能であったと考えた.この場合,配向製膜したTCNQ@Cu3(BTC)2は導電パスとなる{111}面が薄膜全面で面外・面内方向共に揃うことになるため,{111}面の方位に依存した異方的な電気伝導を実現できた. (2)完全に配向したCu2(Linker)2(DABCO)独立膜を実現した.この独立膜の熱拡散率異方性を測定した結果,細孔断面積が大きいMOFにおいて高い熱拡散率異方性を示すことを明らかにした.また、二次元MOFシートがピラー分子との配位結合により積層しているCu2(Linker)2(DABCO)とは異なり,-(O-Cu)n-鎖が1次元細孔に沿って存在しているCu2(DHTP)独立膜の熱拡散率を測定した結果,熱拡散率異方性と高い熱拡散率を有することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる骨格構造を有する金属有機構造体に関して、エピタキシャル成長による配向薄膜や独立膜の作製手法を確立した。金属水酸化物を基板として用いたヘテロエピタキシャルアプローチの汎用性と有用性を示すことができた。このために、大面積で配向した多結晶体として、結晶構造に依存した異方的な物性をマクロな薄膜や独立膜として測定可能となった。配向金属有機構造体の基礎科学を確立する上で重要な進展があった。このような配向プロセスによって、電気特性や熱特性の異方性を実験的に実証できた成果は重要である。一方、光学品質の試料の作成には成功しておらず、光の透過を前提とした物性開拓には至っていない。表面粗さに影響を受けにくい蛍光などの光学特性については既に異方性を実証している。このような観点から、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度より、高度に配向したMOF多結晶薄膜を用いたソフタアクチュエータへの展開を新たに図る。結晶レベルでの外場応答性(光、熱、溶媒等)を配向膜を用いてマクロスケールで取り出すことで、複雑な変形にも応用可能なアクチュエータを実現する。この研究項目の第一段階としては、高度に配向した応答性MOFの多結晶膜を実現する。基板としてシリコーンやプラスチックを用いることで、結晶レベルでのMOFの変形をマクロな変形へと展開する。異方性結晶を用いることで方位に依存した結晶レベルでの応答性が実現できる。本研究では、提案者独自のエピタキシャル成長法を用いることで、原子レベルでの変異をマクロな変形へスケールアップする。その際に、配向膜の利点を活かすことで、結晶方位に依存したマクロ変形が実現できる。令和4年度の研究項目としては、一軸変形を示すMOF(例えば、MIL53(Al) 等)を配向成膜するための基盤となる科学を確立する。具体的には、ガンマAlOOHナノロッドを基板として用いてMIL53をエピタキシャル成長する。提案者が独自に開拓しているナノロッド配向膜の作成技術を用いて、ナノロッドを配向することで、大面積の配向MOF多結晶膜を実現する。ユニークなデモンストレーションとして、左・右巻きを制御した巻き上げ挙動の実現を目指す。応答性としては、溶媒応答性が基本となるが、実用性の高い遠隔操作の可能性を追求する。リンカーとして光応答性を示すアゾ色素などの誘導体を用いたい。独自の化学合成が必要となるために、研究分担者として有機合成に長けた深津助教を新たに加える。 テーラーメードの配位子を用いた配向MOF多結晶膜を用いた自由度の高い変形挙動を示す応答性MOF薄膜の実現によるソフトアクチュエータを開拓する。
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