研究課題/領域番号 |
20H00413
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石野 良純 九州大学, 農学研究院, 教授 (30346837)
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研究分担者 |
白井 剛 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (00262890)
沼田 倫征 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10401564)
跡見 晴幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (90243047)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CRISPR / ゲノム編集 / ヌクレアーゼ / アーキア / メタゲノム |
研究実績の概要 |
2020年度の研究費を繰り越したため、報告は2020年度の繰越分を加えた報告と重複する。 CRISPRは保存された30塩基対の配列が一定の間隔をおいて繰り返される独特のDNA領域として発見され、原核生物の獲得免疫機能を担う。その免疫機構を利用して、ゲノムDNAの狙ったところを特異的に切断する「ゲノム編集」技術が開発され、急速に普及している。CRISPRは既知のバクテリアの約半分、アーキアの9割弱が所有しているが、地球上には未だ未同定のバクテリア、アーキアが存在することから、未知のCRISPRと未解明の機能が予想される。本計画では、申請者らが自ら作製した海洋メタゲノムデータベースを使って未知のCRISPR-Casを推定し、その機能を解明することと、それらを用いて新技術開発へ応用する。所有する配列データの中からCRISPR配列と予想される領域を10個得ることができ、それぞれについて解析した。繰り返し配列の近傍に位置するタンパク質コードの遺伝子の中から、エフェクターと予想されるORFをクローニングし、大腸菌を用いて発現させて、精製タンパク質を得ようとした。しかし、うまく産生されない場合や、産生されたタンパク質が不溶化したりして、種々の試行錯誤を必要とした。ORFの開始位置を見直したり、crRNAを推定して、複合体を形成させたりして可溶性のタンパク質を取得した。現在までに、既存のCas9やCas12よりもサイズの小さい新規 CAsタンパク質が 4種以上見つかっており、ゲノム編集への応用がうまく進めば、現在広く使われているCRISPR-Cas系よりも、より便利で使い安いツールの提供が期待される。そのために、ゲノム編集への応用な基本的性質を調べている。認識するPAM配列を決定するための実験系も構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染防止のための行動制限期間が長かったことにより、全体的に見て進行は当初の計画よりは「やや遅れている」であるが、計画そのものは順調である。新規のCas エフェクター候補を、まず単独で大腸菌を用いた発現系による組換えタンパク質として産生、精製することを試みたが、大部分は不溶化してしまい、高純度の精製タンパク質として調製することが困難であった。その中には、メタゲノム配列からの候補の抽出故に、翻訳の開始部位が特定できずに間違ったORFを発現していると思われるものもあった。エフェクター候補タンパク質を生化学的に解析して、性質を明らかにするためには、まず標的タンパク質の高純度精製評品が必要であるが、メタゲノムから出発する本研究の戦略上、遺伝子の正確な同定は容易ではなく、実験による試行錯誤が必要であることは計画済みなので、特に遅れているということはない。
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今後の研究の推進方策 |
複数の新規のCas エフェクター候補が高純度の精製タンパク質として調製することに成功しているので、 crRNAとの複合体の解析、PAMの決定、in vitroでの選択的DNA切断などの実験を進めていく。予想通りに実験が進めば、それぞれに新規ゲノム編集ツールとしての応用が期待されるため、特許出願を行い、そのあとで学会発表、論文発表へ進めていく。特許出願が完了するまでは、対外発表は一切控える予定である。
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