研究課題
本研究は、国立遺伝学研究所が保有する野生イネ遺伝資源を利用した有用遺伝子単離と機能解析のプラットフォームの構築を、種子形質をモデルとして行うことを目的としている。本研究により、野生遺伝資源からの遺伝子単離と機能解析がルーチンに行えるようになり、野生遺伝資源が示す多様性の分子基盤が明らかになるとともに、気候変動時代における作物生産安定化に向けて、野生遺伝資源の育種への利用の可能性を広げることができる。本年度は以下の研究項目に取り組んだ。(1) O. rufipogon遺伝子単離・解析プラットフォームの構築と検証(種子形質に着目):O. rufipogonを用いて、形質評価→GWAS解析→候補遺伝子の検証という野生イネからの遺伝子単離・機能解析プラットフォーム構築と実証を行うために、すでに取得済みの約600系統の遺伝研保有O.rufipogonの深読み次世代シーケンス情報から、SNP情報の取得を行なった。また、GWAS 解析に最適な3つの小集団に分類した。(2) O. rufipogonの種子形多様性をもたらすシグナル分子をコードする遺伝子の解析:約300系統のO. rufipogonの種子形データ、ならびにこれらの浅読みシーケンスを利用した予備実験からすでに新規種子形制御シグナル分子を コードする遺伝子を同定している。今年度は、このシグナル分子の種子形制御における作用機序の解明、ならびにイネ栽培化における当該遺伝 子座の役割を解析した。(3) O. rufipogonとO. barthiiにおける種子形質多様性創出機構の比較解析:遺伝研が保有するO. barthii系統群の深読みショートリードゲノム情報を取得し、参照ゲノム配列作成に必要なサンプリングを行うとともに、IRGSP1参照配列に対するSNP情報の取得を行なった。
2: おおむね順調に進展している
予定していた研究内容を実施した。
O. rufipogonの種子や種子に関連した諸形質の取得を行い、実際にGWASによる関連遺伝子の検出を行う。現在取得したSNP情報は、栽培イネを参照ゲノムとしている。今後は、O. rufipgogonを参照ゲノム配列としてSNP情報を取得して、新たにGWASの解析も行う。O. rufipogon以外のAAゲノム野生イネについても、SNP情報の取得、参照ゲノム配列の作成、ならびに種子形質の測定を行い、順次GWAS解析により、イネ近縁野生種に見られる、種子形質多様性の分子機構を明らかにする。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
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