研究課題/領域番号 |
20H00426
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾定 誠 東北大学, 農学研究科, 教授 (30177208)
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研究分担者 |
佐竹 炎 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主幹研究員 (20280688)
原口 省吾 昭和大学, 医学部, 講師 (20592132)
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二枚貝 / 性分化 / 生殖細胞 / GnRH / ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
1)ホタテガイから、血球マーカーとしてtal-1/sclとgata様遺伝子を得ることができた。それらの組織・細胞特異性から、血球のみに陽性シグナルが認められたtal-1/scl 様遺伝子が、ホタテガイの血球マーカーであると決定した。生殖細胞マーカー遺伝子vasaを単離しや。既知の雌雄それぞれの性特的異遺伝子foxl2、dmrt2に加えて、新たな雄特異的遺伝子sox-h、雌特異的遺伝子fem1の探索と単離を試みている。 2)ホタテガイ個体への2種類のpyGnRHペプチドのカカオバターエマルジョン投与によるストレスを軽減するための投与方法の改良を検討した。投与後の生残率をもとに低侵襲性の投与方法として、10%MgCl2への浸漬及び開殻しない個体への0.4 M MgCl2の注射による麻酔後に50μLカカオバターエマルジョンを投与する方法を確立した。 3)ホタテガイの内因性エストロゲンを検出するためのルシフェラーゼによるレポーターアッセイ系の構築を試みた。PCRクローニングしたホタテガイエストロゲン受容体(ER)のリガンド結合領域とヒトERαのDNA結合領域を融合させたキメラERとERE-ルシフェラーゼ(Luc)を共発現させたHEK293細胞と対照群としてヒトERα-ERE-Luc共発現させたHEK293培養細胞を作成した。 4)ホタテガイpyGnRH受容体遺伝子導入したHEK293細胞のpyGnRH11aaPro-NH2による細胞内Ca2+誘導応答に対して、pyGnRH12aaGly-OHは何ら影響を及ぼさなかった。pyGnRH12aaGly-OHに対する受容体は、別に存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生殖周期に伴う生殖細胞の消長と血球の分布及び生殖幹細胞の出現と性分化を可視化するための候補遺伝子の単離・同定がかなり進んだ。ホタテガイの個体に対する2種類のpyGnRHペプチドの性分化と生殖細胞発達への影響を見るための低侵襲性の投与方法を確定させ、現在、本格的な投与実験や組織培養添加実験を実施するために、未分化期の季節を待っている状況である。ホタテガイの内因性エストロゲンの構造決定のための候補分子のスクリーニングに必要な、リガンド結合領域とヒトERαのDNA結合領域を融合させたキメラERとERE-ルシフェラーゼ(Luc)を共発現させたHEK293細胞を予定通り構築することができた。ヒトERα-ERE-Luc共発現させたHEK293培養細胞を脊椎動物型エストラジオールの対照群として、予定通りホタテガイ内因性のエストロゲン同定作業の準備を開始した。ホタテガイpyGnRH受容体の2種類のpyGnRHペプチドに対する応答と相互作用の実験で、新たなGnRH受容体の存在を示唆する結果が得られ、すでにpyGnRH12aaGly-OHに対する新規GPCR(Gタンパク共役型受容体)候補遺伝子の探索に移った。
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今後の研究の推進方策 |
生殖周期に伴う生殖細胞の消長と血球の分布及び生殖幹細胞の出現と性分化の解明では、生殖周期にともなう詳細な生殖細胞の挙動を一般形態と生殖細胞マーカーvasaによって明らかにし、未分化期の生殖幹細胞の実態を明らかにし、その後の雌雄性表現型解析への足がかりを掴む。ホタテガイの個体に対する2種類のpyGnRHペプチドの性分化と生殖細胞発達への影響を調べるための、未分化期の雌雄個体を準備し、低侵襲性の投与法による2種類のGnRHペプチド投与および生殖巣組織への添加培養によって、これらGnRHペプチドの生殖細胞の雌雄分化と発達における相互関係とステロイドホルモン生合成との関係を明らかにする。ホタテガイの内因性エストロゲンを検出するために構築したレポーターアッセイ系を駆使して、キメラER-ERE-Lucに特異的に応答する生殖巣のステロイド画分の分子種の絞り込みを推進する。ホタテガイの新規のGnRH受容体を探し出すために、データベースからGPCRを網羅し、機械学習による予測プログラムを用いて、pyGnRH12aaGly-OHに対する候補受容体遺伝子を絞り込み、それら遺伝子を培養細胞で発現させて、2種類のpyGnRHペプチドに対する応答性によって探し出す。
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