研究課題/領域番号 |
20H00427
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究分担者 |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
吉武 和敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50646552)
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
阿久津 崇 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (70828128) [辞退]
松原 利光 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (70450385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 寿命 / 老化 / 成長 / 魚類 / アユ / ゼブラフィッシュ / ニシオンデンザメ / オンデンザメ |
研究実績の概要 |
超長命魚としてオンデンザメのゲノムシーケンスを行った。ゲノムは断片化しているものの、幾つかの老化関連遺伝子は抽出でき、ハダカデバネズミなど既報の長命種において長寿命への寄与が示されているヒアルロン酸合成酵素などにおける類似性が認められた。また、短命種のアユについては、群馬県水産試験場で維持している遺伝的に均一な純系に近い群馬系統を用い、産卵・排精前後の各組織の採取を行った。産卵・排精後のアユでは急激に体重が減少し、雌雄60尾ずつの試験魚が1-2ヵ月で死亡したが、筋肉における比較RNA-seqから発現変動遺伝子を抽出し、エンリッチメント解析を行った結果、産卵・排精後のアユでは筋委縮が起きており、老化細胞が蓄積していることが示唆された。 一般的な魚類が示す筋肉の抗老化特性については、ゼブラフィッシュを用いて骨格筋の空間的トランスクリプトミクスを行った。空間的トランスクリプトミクスの結果、従来の骨格筋の解剖学的分類より高解像度で魚類筋肉の構造を明らかにすることが出来た。例えば、中間筋は速筋と遅筋の中間的性質を示し、従来は体側部の速筋と遅筋の間に分布するとされていたが、本解析では背側と腹側にも大きく広がっていることが示された。また、速筋は6つの領域に分割でき、特に腹側の一部領域では筋形成が活発に起きていることが示された。魚は筋肉が終生的に成長し、老化が抑制されている。本結果は、筋肉の特定の領域で終生的な筋形成が行われている可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニシオンデンザメの試料採取については、新型コロナ感染拡大によってサンプリングに行くことが出来なかった。それ以外にも前半は緊急事態宣言等で研究活動が大きく阻害され、学会等の中止によって情報収集などにも支障があった。ただし、ゼブラフィッシュを用いた筋成長の解析やオンデンザメゲノムの解析は既存のデータを用いて研究活動を継続し、期待していた成果を挙げることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
超長命魚としてオンデンザメ、短命魚としてアユについて、引き続き得られたゲノムデータの解析を進める。オンデンザメについては、得られたゲノム情報は断片化しているため、より長く配列を得られるよう、ロングリードシーケンスを試みる。 また、ニシオンデンザメについて、野生個体の捕獲を行う。 アユについては、群馬県水産試験場で維持している遺伝的に均一な純系に近い群馬系統を用い、筋肉以外の組織についても遺伝子発現解析を進めると共に、筋肉における組織学的観察から、筋委縮や老化細胞の蓄積について検討する。 また、ゼブラフィッシュの成長過程での筋肉の空間的トランスクリプトミクスについて、bulk RNA-seqなどで低発現量遺伝子を含む詳細な検討を加えると共に、一細胞RNA-seq によっても、魚類特異な筋成長と遺伝子発現との関連を解析する。
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