研究課題/領域番号 |
20H00427
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究分担者 |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
吉武 和敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50646552)
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
松原 利光 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (70450385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 寿命 / 老化 / ゼブラフィッシュ / オンデンザメ / アユ |
研究実績の概要 |
オンデンザメのゲノムシーケンスについては、本個体がオンデンザメとニシオンデンザメのハイブリッドである可能性を排除するため、ミトコンドリア全長と核ゲノムの一部配列を確認し、いずれもオンデンザメと一致した。また、ハプロタイプからも日本近海で捕獲されたものと矛盾がなかった。別途、オンデンザメ試料からロングリード用DNAを得るため、Monarch DNeasy blood and tissue Kit(QIAGEN)、Monarch HMW DNA Extraction Kit for Tissue(NEW ENGLAND BioLabs)、Nanobind Tissue Big DNA Kit(circulomics)、Nucleobond HMW DNA(MACHREY-NAGEL)、および一般的なフェノールクロロホルム法を用いてDNA抽出を行い、得られたDNAのサイズ分布を確認した。高分子DNAが最も多く抽出できたのは、Nucleobond HMW DNAであった。陰イオン交換によって不純物が除去され、自然落下カラムを用いることで、DNAの剪断が最小限に抑えられるこの抽出法は、オンデンザメのゲノム抽出においても有用であることが示された。 ゼブラフィッシュの6日齢、2か月齢、一年齢における筋肉のシングルセルRNA-seqを行った。UMAPによるクラスタリングによって、速筋細胞、遅筋細胞等の筋細胞を含むクラスターを得た。また、昨年度に行った空間的トランスクリプトミクスのデータ解析から、筋形成に関わるIGFの結合タンパク質であるIGFBPのサブタイプが、筋形成の活発な領域において特異な発言を示すことが明らかになった。アユについては、産卵後の老化細胞の蓄積の可能性について、SAβガラクトシダーゼ活性染色で検討したが、筋肉における老化細胞の蓄積は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
短命魚のアユの解析やモデル魚のゼブラフィッシュを用いた解析は予定通り進行しているが、ニシオンデンザメについてはコロナ感染の影響でサンプリングが行えず、ゲノムシーケンスに取り掛かれていない。
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今後の研究の推進方策 |
アユについては、ゲノムシーケンスのデータ解析を進めると共に、繁殖後の老化細胞の蓄積について、手法を変えて検討する。また、老化細胞の蓄積とも関連するNAD+の組織中の変化についても検討する。 魚類筋肉の抗老化特性については、昨年度はゼブラフィッシュを対象に、空間的トランスクリプトミクスを行い、筋肉の特定の位置で、終生的な筋成長が行われている可能性を示すことが出来た。本年度シングルセルRNA-seqによって、一細胞レベルの発現遺伝子情報を得ている。来年度はこれらデータを統合し、ゼブラフィッシュ筋肉の加齢に伴う遺伝子発現変動の詳細を明らかにする。 ニシオンデンザメについては、引き続きサンプル確保を続ける。近縁種のオンデンザメを用いて、室温保存を経験した凍結保存サンプルでも一定の質のDNAを抽出できることがわかったため、ニシオンデンザメについてもそうした抽出法を適用できると期待できる。
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