研究課題/領域番号 |
20H00428
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北川 貴士 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50431804)
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研究分担者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
峰岸 有紀 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80793588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サケ稚魚 / 回遊 / 環境DNA / 代謝 / 数理モデル / 餌環境 / 耳石 |
研究実績の概要 |
今年度は以下について検討した。複数の水温・餌量条件下で飼育したサケ稚魚の,成長と運動へのエネルギー配分量を代謝量を計測して定量化した。その結果,高水温(14℃)かつ低餌量(体重1%)条件下では,成長と運動へのエネルギー配分量は大幅に低下した。三陸沿岸域において近年見られる暖流勢力の増大は,春季の高水温と低餌量環境をもたらすことが考えられ,十分に成長できない稚魚が減耗することで,親魚の回帰率が低下すると推察された。
サケ稚魚の耳石に含まれる酸素安定同位体の水温環境履歴としての妥当性を検討するために,温度別に同位体分別と水温の関係を把握するための飼育実験,同位体分析に着手した。また,温度制御下で飼育したサケの耳石を用いて代謝指標の有用性の検証を進めた。サケ耳石の炭素同位体比は高水温の試験区ほど低い値を示し,溶存炭素の炭素同位体比の試験区間の違いを超えて有意な傾向が見られた。この結果は高水温ほど代謝量が増加することと整合的であった。さらに脊椎骨に微量に含まれる炭酸基の炭素酸素同位体比から代謝を求める手法の開発した。
岩手県水産技術センターと共同で,2021年3月から6月に岩手丸定期海洋観測時に岩手県沿岸から50海里沖までの12測点において表層および水深50 mから採水を実施した。得られた試料を環境DNA分析に供したところ,稚魚が岸伝いに北上する,もしくは三陸から道東に向けて最短距離をとる経路の双方が示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,野外調査などについては制限を余儀なくされたが,飼育実験などについては順調に進めることができ,データを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響も少しずつ小さくなってくると思われる。野外個体の採集や分析,海洋環境調査を進めていく。
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