研究課題/領域番号 |
20H00433
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
|
研究分担者 |
増田 誠司 近畿大学, 農学部, 教授 (20260614)
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
田中 義正 長崎大学, 先端創薬イノベーションセンター, 教授 (90280700)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | バイオマス / セルロース / ヘミセルロース / リグニン |
研究実績の概要 |
1.カラマツ木材細胞壁中の主要ヘミセルロース成分であるO-アセチルグルコマンナン、アラビノ-4-O-メチル-グルクロノキシラン、セルロースを木材から直接単離し、その反応性を検討したところ、木材を直接反応させる場合と比較して、反応性が低いことがわかった。すなわち、木材を反応させる方が、個々の成分を誘導体化し易いことが明らかとなった。 2.Cx, x=2のエーテル化物について、詳細な構造-物性相関に関する研究を推進した。エチル化反応生成物を三成分分離しその成分を詳細に検討した結果、リグニンフラクションに含まれているヘミセルロースはリグニンと共有結合している可能性が高く、リグニンと共有結合していないヘミセルロースは両親媒性の物質としてヘミセルロースフラクションとして単離されることが示唆された。これらの結果について特許を出願した。 3.ヒノキ木材ブロックからリグニンを除去した材料を作成し、細胞壁中および、細胞内腔にミネラルを析出させた。続いて、圧縮したところ、透明な木質系無機-有機複合材料を作成することに成功した。得られた材料は非常に高強度である。これらの結果について特許を出願した。 4.木質細胞壁成分由来ブロックコポリマーの高機能化を目指し、細胞接着因子含有温度応答性バイオマスヒドロゲルの合成を行なった。次いで、合成したヒドロゲル上で細胞培養実験を行ったところ、細胞をシート状に培養することに成功し、温度を下げることにより、細胞シートを培地から剥離することに成功した。これらの結果について特許出願準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオマスの直接エーテル化により、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの三成分が分離する理由が明らかになりつつある。また、細胞壁構造の特性を利用した材料開発にも成功している。木材から得られたエーテル化物は、市販の同様なエーテル化材料と比較して、高い性能を有していることが判明した。このように、概ね、計画通り順調に本研究の目的を達成しつつあるから。
|
今後の研究の推進方策 |
1.Cx, x=3以上のエーテル化反応を行う。 2.単離したヘミセルロース、milled wood lignin (MWL)を1成分とするメチルセルロース系ジブロックコポリマーを合成し、界面活性能と会合体の形態を指標とした分子特性の解析を行う。 3.刺激応答性木質細胞構成成分由来材料の合成と性能評価を行う。具体的には、磁性ナノ粒子表面への木質系ジブロックコポリマーを固定化し、刺激応答性材料の創出を目指す。 4.針葉樹のみならず、広葉樹、草本植物のエーテル化反応を遂行し、細胞壁構成全成分の分子特性に関する広範囲な知見を集積する。
|