研究課題/領域番号 |
20H00436
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
韓 慶民 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40391180)
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研究分担者 |
宮澤 真一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10578438)
壁谷 大介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353650)
野口 享太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353802)
佐竹 暁子 九州大学, 理学研究院, 教授 (70506237)
松本 麻子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353862)
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生態・生物多様性 / 結実豊凶 / 根圏 / 遺伝子情報 / 窒素代謝 |
研究実績の概要 |
異常気象の頻発など環境変動は、送受粉、捕食、種子散布といった生物間相互作用にずれを生じさせ、森林生態系の生物多様性に打撃を与える可能性が高い。このため、生物多様性を支える基盤である樹木の種子生産について、その結実豊凶のメカニズムを解明し、環境変化に応答する樹木の結実間隔や着果量を予測し、生物多様性を維持するための対応策を提案することが求められている。 本研究では、遺伝情報に基づいて根における個体分布を可視化し、地上部の樹冠と地下部の根圏共生系を統合した個体(群)を作り出す。これらの真の個体を対象として、地上部-地下部間の窒素・炭素資源動態の経時変動パターンの解明に取り組む。これらと花芽形成および窒素代謝に関わる遺伝子発現の因果関係を検出することにより、植物-土壌系の窒素循環が結実豊凶現象を制御する仕組みの解明を目指す。 R4年度は、新潟県苗場山麓にあるブナ林分を対象に、細根による土壌栄養塩の吸収が繁殖パターンに与える影響を解明するために、遺伝子情報に基づく細根の個体識別を行った。その結果、同じ個体の細根が樹幹から半径約6m範囲に分布していることが明らかになった。また、一つの土壌コアーには最大6個体の細根が混在していた。さらに、プロット内には6個体の樹幹が存在したのに対し、合計22個体の細根が検出された。これらの結果は、根圏を可視化し、地上部の樹冠と地下部の根圏共生系を統合した個体を識別できた初めての知見であり、樹木の結実豊凶メカニズムの全貌解明を画期的に進展させるだけでなく、個体間の競争・共生に関わる学問分野や陸域の炭素・窒素などの物質循環の研究を飛躍的に発展させるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、遺伝情報に基づいて細根における個体分布を可視化し、地上部の樹冠と地下部の細根を統合した個体(群)を作り出した。また、樹液流束の季節変化と、導管・篩管から採取した樹液のアミノ酸及び無機体窒素の季節変化については、結実の有無を含む2年間の分析が終わっている。サンプルの資源量と開花遺伝子の発現量については現在分析中である。以上のことから、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度も地上部の枝・葉、地下部の細根を定期的に採取し、細根の個体識別を行うとともに、採取したサンプルの資源量と開花遺伝子の発現量を分析する。また樹液流束の計測を継続して、導管・篩管から採取した樹液のアミノ酸及び無機体窒素を定量する。 さらに、地上部-地下部間の窒素・炭素資源動態の経時変動パターンの解明に取り組む。これらと花芽形成および窒素代謝に関わる遺伝子発現の因果関係を検出することにより、植物-土壌系の窒素循環が結実豊凶現象を制御する仕組みの解明を目指す。
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