研究課題/領域番号 |
20H00438
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 康博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50202213)
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研究分担者 |
中谷 朋昭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60280864)
飯田 俊彰 岩手大学, 農学部, 教授 (30193139)
海津 裕 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70313070)
橋本 禅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20462492)
竹田 麻里 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60529709)
村上 智明 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60748523)
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30756599)
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任講師 (00569494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 組織論 / 情報技術 / 社会的分業化 / 情報の不完全性 / 食料・農業・農村政策 / Best-Worst Scaling |
研究実績の概要 |
最新の情報技術の利用可能性と課題を参照しながら、わが国食料・農業・農村分野の組織が機能的にどのように分化・再編されなければならないか、ビジネスと政策の両面から考察するため、農業経済学と農業工学・計画学との学際的アプローチにより、以下のような観点から理論的・実証的分析を進めた。①卸売市場法が2018年6月に改正され、2020年の施行に向けて準備が進められていることを踏まえて、その課題と将来展望について農林水産省の担当部署、卸売市場業者、仲卸業者への調査(オンライン)を実施した。②「食の価値」モデルに基づいて、品質、健康、倫理の観点からの消費者の選好状況を確認した。③農用車両の自動化適用の技術開発を進めたが、コロナ禍で現地実験ができなかったために、写真測量ソフトウェアを用いて地図を作成し、ドローンの制御ソフトに読み込み草刈りロボットのルートの作製を行った。④換地区画と農家をマッチングさせるアルゴリズムを開発することとした。最適な換地の配置をコンピュータ上で決定するために、マッチング・ゲーム理論によるメカニズムデザインの手法を援用した。⑤北海道別海地域における草地資源の質的情報を収集するために衛生画像の解析を行ったが、そこで現地関係者から情報を加えることで、画像解析・機械学習の適用によって雑草と牧草の識別が可能となった。あわせてコントラクターやTMRセンターの利用を含んだ大規模なアンケート調査を酪農家家計単位で実施した。⑤水田湛水深の遠隔監視システムを設置して、GPSロガーと営農記録によって水田への訪問回数を把握した。⑥農業排水による水質汚濁が問題となっている地域の生態系サービスのシナリオ分析に着手した。あわせて水質汚濁の原因となっている農地の増減に着目し,将来の土地利用パターンのプロジェクションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍にあって現地調査が困難となり、研究が遅れることとなった。ただしその中にあって、以下のことは検討できた。①自律走行可能な草刈りロボットの制御を行うため,RTK(リアルタイムキネマティック)-GNSSを用いたドローンにより、空中撮影を行った。オーバーラップをもたせた複数枚の画像から,写真測量ソフトウェアを用い,正確な緯度経度情報を持った地図を作成した。これをドローンの制御ソフトに読み込み草刈りロボットのルートの作製を行った。②実際の換地事例における地理空間データ(シェープファイル)から、シミュレータの入力データである区画整備前後の圃場データを生成する機能を実装した。母地換地方式(密集地集団化方式)、DA(deferred acceptance)アルゴリズムを用いた。③北海道別海地域における草地資源の質的情報を蓄積した。8月に現地調査を実施し解析を進めた。④国内全体のICT活用状況等の情報収集の整理、近年の土地改良法改正で作成されることになった利水調整規定の特徴と土地改良区の水管理システム等技術的側面(ICT活用状況)・受益地内の農業構造の変化の状況に関する調査の可能性の検討等、水管理の技術、組織、秩序に関する現状の整理を行った。⑤水田湛水深の遠隔監視システムを導入し、遠隔監視システムが設置された水田への訪問回数と、設置されていない水田への訪問回数をGPSロガーと営農記録によって把握した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍でも対応可能な対応を工夫し、以下の点に留意しながら研究を推進する。①新型コロナ感染症が収束した段階で農産物流通に係わる関係者を訪問して詳細な実態調査を実施する。②ウィズコロナとアフターコロナとの食選択行動の違いに留意しながら、食の価値モデルの観点から、消費者の選好を数量的尺度の把握を試みることとする。③自動走行機の草刈りを行う対象圃場を決定し、実験を本格的に行う。すでに用意しているドローンを利用して、マッピング、自動運転の一連の作業を行い、省力化の効果を検証する。④換地モデルの検討では、コロナ禍で現地調査が困難であったためにあくまでgrid上のシミュレーションレベルの分析にとどまったことから、実際に農家の意向を反映させた分析を行う。調査地の土地改良区組合員を対象に、メカニズムデザインの理論を適用した場合の結果と、実際の換地委員が貼り付けた換地の結果がどの程度乖離しているのか、議論する。⑤水田圃場の水管理システムの検討では、遠隔監視だけでなく、遠隔操作システム(遠隔操作型給水栓)を導入した圃場で検討を行う。また圃場巡回の労力削減だけでなく、遠隔操作システムによって水稲にとって適切な湛水深と水温がキープされることによる収量増加や品質向上にも焦点を当てる。⑥生態系調査に関してはコロナ禍にあっても研究することができたので、このまま順調に検討を進めて、土地利用シミュレーションのバリデーション,生態系サービス(窒素・リン除去)の評価を行う。⑦土地改良区調査については、新型コロナの感染状況にできるだけ左右されないように、現地とのオンラインでのコミュニケーションをとれる体制を構築し、空間情報のデータ分析を先行して行うように努めることとする。
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