研究実績の概要 |
減数分裂における相同染色体の対合・組換えは、父母に由来するゲノムを再編する重要なプロセスであり、その後に起こる染色体分配を正常に行うために必須である。本研究は、相同なパートナーを見つけるための相同性識別のメカニズムを理解することを目的とする。そのために、生物材料として分裂酵母を用い、生細胞蛍光イメージング・遺伝学解析・生化学解析を用いて、相同性の識別コードとして働くクロマチン構造とその形成メカニズムを解明する。染色体の相同性を識別するクロマチン構造として、減数分裂コヒーシンが作る高次構造、非コードRNAが作る局所構造、ヒストン修飾が作る微細構造に着目して解析する。今年度は、まず、減数分裂コヒーシンが作る高次構造について解析を行った。減数分裂コヒーシンRec8を生細胞で超解像蛍光イメージングするとクロマチンの軸構造が識別できた。Rec8にランダムに変異を導入し、約3000個の株を取得した。蛍光顕微鏡でビジュアルスクリーニングを行い、クロマチンの軸構造が崩れる変異株を取得した。今後、この変異株を利用して、クロマチン構造を解析する予定である。非コードRNAと非コードRNA結合タンパク質によって作られる相分離が減数分裂期染色体構造に重要であることを明らかにした(Hiraoka, 2020)。ヒストンH2A.Zの欠質変異体を用いて相同染色体組換えに必要な要因を検討し、組換え中間体レベルによってクロスオーバ量が調節されていることを明らかにした(Yamada et al, 2020)。核膜とヘテロクロマチン形成との関係を明らかにした(Hirano et al, 2020)。核膜とERの境界形成に重要な因子を発見した(Hirano et al, 2020)。また、核膜の一過的な破裂は、減数分裂後の胞子形成に影響を与えることを明らかにした(Yang et al, 2020)。
|