研究実績の概要 |
減数分裂コヒーシンRec8にランダムに変異を導入し、約3000個の株に対して、蛍光顕微鏡でビジュアルスクリーニングを行い、姉妹染色分体の接着が正常にもかかわらず、クロマチン軸構造が崩れる変異株を探した。クロマチン軸構造が崩れる変異株は約100株得られたが、これのほとんどは、姉妹染色分体の接着も異常になっており、クロマチン軸構造形成と姉妹染色分体接着の機能は密接に連関していることが示された。しかし、姉妹染色分体の接着が正常にもかかわらず、クロマチン軸構造の形成に障害を持つ変異株を1株だけ取得できた(Rec8-F204S)。Rec8欠損株およびRec8-F204S変異株でHi-C法を用いてDNAの折畳みパターンを分析した結果、これらの株では、クロマチン軸構造が崩れることが明らかになった。さらに、変異株では相同染色体対合と組換えの頻度の低下が見られた。これらのことから、Rec8がクロマチン軸構造の形成および相同染色体対合・組換えに必要であると結論した。この成果は、原著論文を Nucleic Acids Research誌に発表するとともに、総説として紹介した(Sakuno et al, Nucleic Acids Res 2022; Sakuno & Hiraoka, Genes 2022)。また、相同染色体対合に対するシナプトネマ複合体に類似する構造の寄与についても明らかにし、論文を発表した(Ding et al, Chromosoma 2021)。これらのことを総合して、 Rec8が作るクロマチン軸構造が相同染色体の整列に寄与し、その後に相同領域に非コードRNAタンパク質複合体が形成され、相分離によって相同染色体がたぐり寄せられるというモデルを提唱した(Hiraoka, Curr Genet 2021)。
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