研究実績の概要 |
減数分裂における相同染色体の対合・組換えは、種の維持のため重要なプロセスである。本研究は、相同染色体識別・対合に必要なクロマチン構造の分子基盤と形成メカニズムの解明を目的にするものである。具体的には、(1)減数分裂コヒーシンが作る高次構造、(2)非コードRNAが作る局所構造、(3)ヒストン修飾が作る微細構造、の3項目について解析を進める。 (1) Rec8欠損株を用いて染色体上の非RNA領域の対合をHi-Cにより解析した。野生株では相同染色体上の非コードRNA領域同士でのみ対合が起こるのに対し、Rec8欠損株では、非相同染色体間でも異常な対合が起こることを明らかにした。この結果は、相同染色体対合には、Rec8が作るクロマチン軸構造が必要であることを示している。 (2) 非コードRNAとその結合タンパク質との複合体が相分離を引きおこす条件を検討するために、2種の非コードRNA結合タンパク質を精製し、試験管内で液滴を形成させる実験を行った。その結果、非コードRNAの存在下で、効率的に液滴を形成し相分離することを示した。この液滴の物理化学的特性について論文を投稿するとともにプリプリントサーバに公開した (Ding et al., bioRxiv)。 (3)ヒストン修飾が作るクロマチン構造については、ヒストンH4のリジン残基K5、K8、K12およびK16がアセチル化されない変異株(リジンをアルギニンに置換したKR変異株)の薬剤感受性を調べた。その結果、KR変異株はDNA複製に影響する阻害剤に感受性を示すことがわかった。KR変異株の薬剤感受性を相補する遺伝子を検索した結果、DNA複製に関わる遺伝子が同定された。さらにアセチル化ヒストンと相互作用するタンパク質が薬剤感受性の相補に必要であることもわかった。ヒストンH4アセチル化がDNA複製に関与すると結論した。
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