Wntは様々な組織幹細胞の分化状態を制御する鍵となる因子である。代表者は、Wntが受容体と作る高次シグナリング複合体の構造モデルを世界に先駆けて提唱している。本研究では、Wnt-Fzと補助因子からなる高次シグナリング複合体の構造とその細胞上での作用機序を、独自に開発したWntと特異的に結合する環状ペプチドやアゴニストなどの分子ツールを利用してケミカルバイオロジー的手法も取り入れて明らかにする。 Wntシグナル伝達は、高等生物の分化発生の理解に重要であるとともに、オルガノイド培養においてWntが必須の添加物であるなど、医学生物学的重要性が増している。世界的に激しい競争の中、代表者はWnt関連タンパク質の生産・解析技術のノウハウを蓄積してこの分野をリードしている。本研究成果は高い学術的価値を生み出すとともに、開発した分子ツールが優れた研究用ツールや場合によって医薬品になるなど期待される。
|