研究課題
本研究では、ゲノム上の様々な遺伝子制御がどのような分子構造を基盤として起こるかを解明し、物理・化学の観点から遺伝子制御のメカニズムを理解することを目指している。これまで私たちは、1つ1つのヌクレオソームがどのような3次元配置と配向をとるかを実験的に導出する手法:Hi-CO法を新たに開発し(Ohno et al., Cell, 2019)、出芽酵母ゲノムの階層構造の解析を行ってきた。初年度となる本年度においては、Hi-CO法の適用範囲を、出芽酵母からヒト細胞に拡張するためのプロトコルの開発を行った。ヒトゲノムは、出芽酵母ゲノムと比べてゲノムサイズが約250倍大きいことから、その解析にはプロトコルの効率を高める必要があった。私たちは、培養の容易な株化培養細胞を数種類用いて、化学固定したゲノム構造内における近接したDNAの連結をより高効率に行い、さらにその産物を高純度で、かつ大量に抽出するための化学的条件の検討を行った。検討の結果、ヒトゲノム内の連結DNA産物を従来と比べて数十倍の量得ることができるようになり、実際に中規模シーケンサーであるHi-seqを用いてヒトゲノム内の連結情報をまばらながらも得ることができるようになった。
1: 当初の計画以上に進展している
Hi-CO法のヒト細胞への拡張は本年度と次年度にかけて行う予定であったが、現段階でほぼ達成し、大規模にゲノム構造の解析を進める段階まで研究が発展しているため。
研究計画は現在のところ順調に進捗しており、今後も申請時の研究計画の流れに沿って研究を進めていく予定である。次年度においては開発した改良型Hi-CO法を用いて、様々な生理条件下でヌクレオソーム分解能でのヒトゲノムの構造を解析していくことを予定している。現在用いているHi-seqシーケンサーの代わりに、約十倍の数のDNA鎖の解析を可能とする大規模シーケンサーNova-seqを用いて解析を行うことで、現在のデータの不足性を解消できるものと期待している。さらには、DNA鎖やヒストンの物理的特性や化学的特性を加味したより妥当性の高い構造の導出を行うことを目指して、原子分解能で構造計算を行う手法の開発を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 8件)
Nature Protocols
巻: 16 ページ: 3439-3469
10.1038/s41596-021-00543-z
Bioinformatics
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10.1093/bioinformatics/btab698