研究課題/領域番号 |
20H00463
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 所長 (40229349)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNA複製タイミング / DNA複製開始 / クロマチンループ / 染色体高次構造 / 核膜 / 多量体形成 / グアニン4重鎖DNA / RNA-DNAハイブリッド |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでの、DNA複製の研究から、代表的な非B型核酸構造のRNA-DNAハイブリッド/グアニン4重鎖(G4)が、1)染色体高次構造形成を介した複製開始の阻害、及び、2) 複製開始の正のシグナル、のDNA複製の2種類の重要な側面に関与する可能性を発見した。1)では、進化的にヒトから酵母まで保存されたRif1タンパク質が、2)ではPriAおよび機能未知の新規タンパク質が、G4を直接認識することが重要である。これまでの研究から、Rif1のG4認識に必要なドメインとその相互作用の詳細を解明し、Rif1によるクロマチン高次構造形成のモデルを提出した。またRNA-DNAハイブリッド/G4からの複製開始をin vitroで再現し、G4構造の複製開始における重要性を検証した。本研究ではこれらの発見をさらに発展させ、(1) Rif1のG4結合と、多量体形成能を担うドメインの詳細な解析と、それによる核膜近傍における核内染色体高次構造に形成のメカニズム、(2) RNA-DNAハイブリッド/G4に依存した普遍的な複製のメカニズム、さらに、(3) 細胞内のG4を検出する新規手法の開発と、G4の細胞内プロファイルを決定し、その多様な機能の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Rif1とG4/核膜の相互作用による複製タイミングドメイン形成メカニズム:(1) 分裂酵母と動物細胞Rif1のC末領域に、G4結合、多量体化を規定するドメインが存在する。(2) 分裂酵母Rif1を用いて G4結合能或いは多量体化能を選択的に喪失した変異体を同定し、両機能がRif1の複製抑制能に必要である事がわかった。(3) Rif1のC末領域が、核膜との相互作用に必要であり、C末欠失によりタンパク質が細胞質に漏れだす。(4) Rif1はパルミトイル化される。(5) Rif1C末ポリペプチドを大量精製し、その構造解析から、coiled coil構造を形成し、4量体を形成する可能性が示唆された。 2)RNA-DNAハイブリッド/G4に依存する複製開始のメカニズム:(1) RecA結合に依存してPriAが複製開始領域に結合し複製が開始する。(2) oriT1近傍に複製開始領域を検出した。この領域を別の領域に移動しても同じ部位から複製開始できる。(3) RNA-DNA hybridを あらかじめ形成することによりin vitroで人為的に複製開始を誘導できることを示した。 3)RNA-DNAハイブリッド及びG4の細胞内動態の解析と新規機能の発見:(1) RNaseH変異体を用いることによりRNA-DNA hybridのシグナルを細胞内のfociとして複数検出した(大腸菌および酵母)。(2) G4のloop構造のS1 nucleaseへの感受性を利用した、細胞内G4検出技法を確立、報告した。(3) 大腸菌ゲノム上のRNA-DNA hybrid形成部位をChIP-seqにより決定した。(4) G4結合タンパク質を多く含むと予想されるDDX ヘリカーゼを網羅的にcloningし、G4に特異的に結合するDDX因子を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1)Rif1とG4/核膜の相互作用による複製タイミングドメイン形成メカニズム:Rif1が核膜に局在するメカニズムを解明する。Rif1の核膜局在の複製タイミング制御における意義を解明する。Rif1のリン脂質修飾(パルミトイル化)の意義の解明。Rif1のパルミトイル化責任酵素(S-アシルトランスフェラーゼZDHHC)を同定する。 2)RNA-DNAハイブリッド/G4に依存する複製開始のメカニズム:(1) 人為的な複製開始ユニットを大腸菌、酵母、動物細胞で構築し、複製能を検討する。(2) G4/RNA-DNAハイブリッドからの複製開始を精製タンパク質で再構成し、そのメカニズムを解明する。(3) 遺伝学的にこの複製系に必要であると同定した、新規G4結合タンパク質の機能を解明する。 3)RNA-DNAハイブリッド及びG4の細胞内動態の解析と新規機能の発見:(1) rnh変異体、Topoisomerase変異体、Senatxin(rho)変異体、G4ヘリカーゼ変異体などにおけるRNA-DNA hybridおよびG4の細胞内動態を解析する(大腸菌、酵母、動物細胞)。(2) 上記の遺伝的背景でRNA-DNAハイブリッド及びG4の形成部位を、RNaseH(D145N), BG4, G4Pなどのプローブを用いChIPseqで決定する。(3) 分裂酵母の単離核/制限酵素切断を用い、loopの検出により内在性のG4の検出が可能か検討する。(4) 同定したG4結合性DDX ヘリカーゼ由来の、G4認識ドメインの同定を行い、それを用い動物細胞でG4の網羅的解析を行う。
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