研究課題/領域番号 |
20H00466
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30311343)
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研究分担者 |
佐藤 裕公 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (40545571)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 受精 / 膜融合 / 卵母細胞 / 精子 |
研究実績の概要 |
1) 線虫において受精に関与する細胞膜タンパク質の探索と動態解析 線虫 C. elegans の網羅的 RNAi 解析により発現抑制によって不妊となる遺伝子群 Ste (P0が不妊)、Stp (F1が不妊) が報告されているが、個々の解析はほとんど進んでいない。そこで、これらの遺伝子群から精子と卵母細胞の接着、繋留、融合ステップに関与しうる膜タンパク質を抽出し、現在RNAi法により受精のどの段階で異常を示すか等について順次表現型解析を進めている。また、これらの受精関連因子について酵母ツーハイブリッド法により相互作用因子を探索している。 2) マウス卵母細胞に発現する細胞膜タンパク質の探索と動態解析 マウス卵子は,性ホルモン等を用いた過剰排卵条件下においても~30個/成熟個体程度の細胞数しか得ることができない希少な生体材料であり、また卵を囲む数種類のタンパク質からなる巨大細胞外基質である透明帯がプロテオミクス解析における検出の感度や細胞蛋白質量の算定などを妨げる懸念がある。そこで、マウス未授精卵を構成するタンパク質の全容を知るため、野生型マウスの未受精卵を500個以上取得してタンパク質を多量に含む透明帯を除去した後、徳島大学の小迫英尊教授との共同研究により卵抽出液について網羅的質量分析を行った。その結果、透明帯を除く約1700種の卵構成タンパク質の同定に成功した。次に、この知見を活かし、野生型の未受精卵と受精卵、および受精異常を示す未受精卵についてそれぞれ約350個ずつ調製しプロテオミクス解析を行った。その結果、3000種以上の卵構成タンパク質を同定し、受精前後において増減する膜タンパク質を多数同定した。現在、これらについて順次、蛍光タンパク質を融合したものを卵において発現し、細胞内局在性等について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徳島大学との共同研究により、透明帯を除去したマウス未受精卵のプロテオミクス解析を高精度で行うことができた。この手法により、野生型受精卵と受精不能卵の網羅的なタンパク質比較解析を行い、受精不能卵において増減しているタンパク質群が明らかとなった。一方、線虫における受精関連因子の探索、解析も順調に進んでおり、実験計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
線虫に関しては、昨年度の遺伝学的手法に加え、以下のように生化学的手法も用いて受精関連因子の同定を試みる。線虫のfer-1変異株の卵母細胞は成熟するものの受精のステップに特異的に異常を示すことが知られている。そこで、このfer-1変異株の雌雄同体をセロトニン処理することにより成熟した卵母細胞を強制的に排卵させたのちに、この卵表層のビオチン化を行い、成熟した卵母細胞膜上に露出している膜タンパク質の同定を試みる。マウスタンパク質については卵母細胞特異的に発現している膜貫通タンパク質について優先的に解析を進める。このようにして得られた候補因子について定法にしたがい、細胞内局在や動態等の解析を開始する。また、線虫であればEGG-1等、マウスであればJUNOやCD9等の精子と卵子の接合に重要な因子との相互作用やそれぞれの欠損卵におけるタンパク質安定性や局在性の変化等についての解析を進める予定である。
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