研究実績の概要 |
Golgi-mediated degradation pathway (GOMED)は、ゴルジ体から細胞外、細胞膜に運ばれる蛋白質輸送に障害が生じたときに、行き場を失った蛋白質が分解される機構である。本申請では、1, GOMED実行機構の解明、2, GOMEDが重要な役割を担っている細胞の種類の同定、3, GOMEDの動態解明、4, GOMEDの変調から生じる細胞障害機序、5, GOMEDの可視化などを目的として研究を行った。その結果、「GOMED実行機構の解明」に関しては、初期に機能するUlk1に着目し、(1)Ulk1の746番目のセリン残基のリン酸化が、重要であること、(2)このリン酸化によりUlk1はゴルジ体に移動しGOMEDを誘導すること、(3)このリン酸化は通常のオートファジーには影響を与えないことを発見した。また、鍵分子としてWipi3を発見し、Wipi3を欠損するとGOMEDが誘導されないことを見出した。「GOMEDが重要な役割を担っている細胞」として、神経細胞を見出した。これは、神経特異的にWipi3を欠損させたマウスにおいて、GOMEDの破綻とプルキンエ細胞の変性を認めたためである。「GOMEDの動態解明」においては、ゴルジ体の局所での形態変化を電顕で捕捉した。また、「GOMEDの変調から生じる細胞障害機序」に関しては、Wipi3欠損プルキンエ細胞の解析から、(1)細胞膜タンパク質であるセルロプラスミンの細胞内蓄積、(2)鉄蓄積を経て、細胞変性に至ることを見出した。「GOMEDの可視化」に関しては、世界初となるFlad法を開発し、Scientific Reportsに発表した。
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