研究課題
私たちの体は、頭尾・背腹・左右という3つの極性(体軸)を持っている。なかでも左右非対称な形態は、発生のどの時期において、どのような仕組みで生じるのか? 本研究の目的は,2つの異なる脊椎動物において、左右非対称性の起源を明らかにすることであった。すなわち、マウスにおいては、繊毛に依存して方向性を持った水流が生じ、その水流を感知する機構を解明する。一方、繊毛に依存しない爬虫類や鳥類においては、繊毛がなくても対称性が破られる機構を調べることで非対称性の起源に迫る。これら2種類の脊椎動物における機構を比較することで、対称性が破られるメカニズムの多様性を明らかすることであった。本年度は、以下のような研究成果を得た。1) マウスにおいては、ノードの不動繊毛が機械的刺激に対して反応することがわかった。すなわち、不動繊毛に光ピンセットで背腹方向に力を加えると、刺激された細胞においてカルシウムの流入やDand5 mRNAの分解が起こることがわかった。Pkd2チャネルを欠損する変異マウス胚では、そのような反応が見られなかったので、力学刺激に対する反応にはPkd2カチオンチャネルが必要であった。2) ニワトリのNodal遺伝子のエンハンサーを、ニワトリ胚へのエレクトロポレーション法で探索したところ、lateral plateでの非対称な発現を担うエンハンサーを同定できた。そのエンハンサーは、マウスNodal遺伝子と同様に、FoxH1結合配列を持っていたが、爬虫類や鳥類だけに保存されている配列がエンハンサー活性に必須であっった。従って、鳥類や爬虫類のNodalは、Nodalシグナルだけでなく、未知のシグナルにも反応していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウスとニワトリ胚を用いた実験から、下記のような結果が得られたので、概ね順調に研究が進展した。1) マウスにおいては、ノードの不動繊毛が機械的刺激に対して反応することがわかった。すなわち、不動繊毛に光ピンセットで背腹方向に力を加えると、刺激された細胞においてカルシウムの流入やDand5 mRNAの分解が起こることがわかった。Pkd2チャネルを欠損する変異マウス胚では、そのような反応が見られなかったので、力学刺激に対する反応にはPkd2カチオンチャネルが必要であった。2) ニワトリのNodal遺伝子のエンハンサーを、ニワトリ胚へのエレクトロポレーション法で探索したところ、lateral plateでの非対称な発現を担うエンハンサーを同定できた。そのエンハンサーは、マウスNodal遺伝子と同様に、FoxH1結合配列を持っていたが、爬虫類や鳥類だけに保存されている配列がエンハンサー活性に必須であっった。従って、鳥類や爬虫類のNodalは、Nodalシグナルだけでなく、未知のシグナルにも反応していることが示唆された。
1) マウスのノードの左右の不動繊毛が、左向きの水流に対して変形しているのか否かを明らかにする。左右の不動繊毛が、左向きに水流に対して異なる反応をする(左側の不動繊毛のみが反応する)理由を調べる。とくに、左右の不動繊毛の微細構造をFIB-SEMで調べて、構造的な違いの有無を明らかにする。2)ニワトリ胚へのエレクトロポレーション法が確立できたので、これを用いて、ニワトリNodal遺伝子のLROでの非対称な発現に必要なエンハンサーを探索〜同定する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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