我々が2004年に発見した学習刺激による樹状突起スパインの増大は、グルタミン酸受容体の発現を長期的に増し、学習・記憶過程を基礎付けることが広く受け入れられる様になってきた。これに対してシナプス形態変化を伴わない長期増強はシナプス特異的に長く続く証拠がない。なぜ、スパイン増大という形態変化がシナプス結合増大に必要かという問いに答えるには、スパイン増大がシナプス前終末にも作用を持つ可能性が検討されなければならない。この可能性の調査は極めて高度な技術が必要で最近まで検証できなかった。しかし、この課題を追求し続けた結果、新しい方法論を組み合わせることにより、肯定的に得ことができる様になってきており、論文を投稿して回答を得て査読者に答える実験を進めるに至った。この論文では、シナプス前部を押す力の測定に成功していたが、この点も査読者に受け入れられ、頭部増大の研究においては新たな局面に移行するものである。この実験においては、スパインネックが縮むを頭部増大があってもシナプス前部効果が生じないことが決定的な証拠となっている。しかしながら、この様な高度な観察とシナプス前部の計測を両立させることは至難の技であり、論文採択への追加実験は粘り強く行なっていく必要がある。
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