脳の動作原理および精神・神経疾患の病態を理解するためには、神経回路網の基盤をなすシナプスがどのように形成・維持され、そして除去されるのかを解明することが必須である。私達はこれまでにCbln1の発見を契機として、分泌された後に細胞外において足場としてシナプスを制御する「細胞外足場タンパク質(Extracellular Scaffolding Proteins: ESP)」という新しい概念を確立した。ESPは従来のシナプス形成分子とは異なり、in vivoにおいて、生涯にわたり神経活動に応じてシナプス形成・維持・除去を制御するという特徴をもつ。本研究では、i) ESPの中でもシグナル伝達機構の解明が遅れているC1q、Cbln4、Neuronal pentraxins (NP)に焦点を当て、それぞれの受容体の同定と機能発現機構を解明する、ii) ドーパミンやアセチルコリン等、拡散性伝達にみられる非シナプス性接着構造の形成機構と生理的意義をESPに中心として明らかにする、iii) 人工的シナプスコネクター開発によって特定の神経回路のシナプスを制御する、という3つの個別目標の達成によりESPの作用機構の解明を大幅に進めることを目指した。
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