研究課題/領域番号 |
20H00488
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斎藤 芳郎 東北大学, 薬学研究科, 教授 (70357060)
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研究分担者 |
堤 良平 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50435872)
外山 喬士 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50720918)
三田 雄一郎 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (70609122)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セレノプロテインP / セレン / 2型糖尿病 / 発現制御 / インスリン分泌 / NRF2 / スルフォラフェン / lncRNA |
研究実績の概要 |
必須微量元素“セレン”は、生体の恒常性維持に必要不可欠な元素であるが、毒性の強い元素でもあり、過剰量と欠乏量の間(適正範囲)が特に狭い栄養素として知られる。近年では、過剰セレンにより、糖尿病リスクが増加する事が報告されるようになった。これまで、2型糖尿病患者でSePが増加し、過剰SePが骨格筋のインスリン抵抗性を増加することや、膵β細胞のインスリン分泌を抑制することが明らかとなっている。過剰SePは、2型糖尿病の“悪玉”であり、極めて重要な治療標的である。本研究では、SePによる糖代謝異常の鍵となる“SePの発現制御機構”および“過剰SePによる糖代謝悪化メカニズム”を明らかにする。具体的には、肝臓におけるSeP発現制御機構の解明(課題①)、過剰SePによる糖代謝・血管恒常性悪化メカニズムの解明(課題②)、東北大学・東北メディカルメガバンク(TMM)地域住民コホート研究(課題③)、以上3つの研究を実施する。今年度、課題①では、SePのプロモーターアッセイ系を構築し、高血糖による発現上昇に重要な領域が同定された。また、SeP発現を抑制する分子として、スルフォラフェンSFNを同定し、その作用機序、特にNRF2との関連性を明らかにした。また、SeP発現を抑制する新規lncRNA L-ISTを同定した。課題②では、膵β細胞のインスリン分泌におけるSePの役割を解析し、過剰あるいは欠乏でもインスリン分泌が低下することが分かった。欠乏による低下では、鉄依存的な脂質酸化反応に依存した障害と、依存しない障害があることが分かった。課題③ではICP-MSによる重金属定量系を構築し、検体の評価を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍で研究の進捗に影響が出る可能性も危惧されたが、試薬の搬入や研究室の運営に大きな支障は無く、予定通り研究が進行し、また一部予定よりも順調に進展し、新たな制御因子が見つかるなど、新規分子の発見につながる課題も見受けられた。そのため、(1)当初の計画以上に進展している。と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度の課題をさらに発展させ、課題①では、高血糖による発現上昇に重要な領域に結合する転写因子の同定へと進める。インスリン等、他の液性因子に関する解析を進める。SeP発現を抑制するスルフォラフェンSFNの作用機序に関する知見について、転写制御②加え、リソソーム活性化などの分解系の寄与についても明らかにする。今後、論文発表まで進める。また、新たな化合物の同定および特許出願まで進める予定。課題②では、膵β細胞のインスリン分泌におけるSePの役割について、論文発表を進めるとともに、in vitroおよびin vivoの解析をさらに進める。特に、過剰SePによる膵機能障害では、障害を担うセレノプロテインを同定する。課題③では測定結果をまとめ、多重相関解析からリスク因子の同定へとすすめる。
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