研究課題
脂質は、多くの生理作用があるにもかかわらず、DNAによって直接コードされていない。そのため、分子生物学的手法の適用には制限があり、また高い脂溶性、相同性のため取り扱いにくい生体成分である。しかし、脂質代謝系をターゲットとした医薬品が複数あることからも、新たな検出技術開発が生命現象の理解、そして創薬基盤研究において大いに貢献することは間違いない。そこで本研究では、上記目的のために、1)酸化脂質分析技術開発、2)疾患モデル動物での方法論の検証、3)酸化脂質がどのような作用を示すのか、の3点を研究項目とした。本年度は、1)の酸化脂質分析技術開発を中心に実施した。1)酸化脂質分析技術開発我々は、これまで脂質酸化過程の起点である“脂質ラジカルに対する検出プローブ”を開発し、現在その構造解析技術開発を進めてきた。これら研究を通じて、その後の代謝産物である酸化脂質がこれまで想定されていた以上、極めて多く生成している可能性が考えられた。そこで本研究項目では、酸化脂質として脂質過酸化物およびアルデヒド体の網羅的検出技術を新たに開発を行った。実際に解析を進めたところ、百種類を優に超える数の構造解析に成功した。2)疾患モデル動物での方法論の検証現在開発している上記技術が、実際に疾患モデル動物にも適用できるか検討を開始するために、疾患モデルでの検証を進めた。本年度は、まず肝障害モデルに適用したところ、実際に動物モデルで数十種類の酸化脂質の検出に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、1)酸化脂質分析技術開発、2)疾患モデル動物での方法論の検証、3)酸化脂質がどのような作用を示すのか、の3点を研究項目としている。本年度は、1)の酸化脂質分析技術開発を中心に実施し、技術開発に成功すると共に実際に疾患モデル動物での検証も行った。その際に新規物質も数多く見出していることから、本研究は順調に進展していると考えている。
我々は、これまでに新規物質を含む数百種類の酸化脂質の検出・構造解析技術開発に成功すると共に、疾患モデル動物でも解析可能であることがわかった。そこで今後は、これら技術を拡張すると共に、本研究の目的の一つである脳疾患モデル動物に適用する。そのために、まずは、脳疾患モデル動物の確立とその進行抑制剤を用いて、酸化脂質が関与するかを明らかにした後、酸化脂質の検出などを行う予定である。
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