研究課題
酸化脂質が疾患に関与していることが報告されているが、これら酸化脂質がどのような構造を示し、疾患を誘発するのかほとんどわかっていない。そこで本研究では、「疾患誘発に係わる酸化脂質の包括的理解」を研究目的とした。実際の研究項目として、1)酸化脂質分析技術開発、2)疾患モデル動物での方法論の検証、3)酸化脂質がどのような作用を示すのか、の3点を設定し、本年度は特に、1)並びに2)を中心に実施した。1)酸化脂質分析技術開発:我々は、昨年度までに、酸化脂質構造解析技術開発を行い、実際にホスファチジルコリン由来の酸化脂質を数百種類検出することに成功している。そこで本年度は、異なるヘッドグループを有するリン脂質をターゲットとした構造解析を進めた。その結果、ホスファチジルエタノールアミンをヘッドに持つ酸化脂質の構造解析が可能になった。また、実際に酸化脂質生成を誘導した培養細胞において、ホスファチジルエタノールアミンをヘッドに持つ酸化脂質検出に成功した。2)疾患モデル動物での方法論の検証:本年度は、不飽和脂肪酸が多い“脳”に着目し、特にアンメットメディカルニーズである血管性認知症のモデル動物を作成し、疾患発症への酸化脂質の関与を検討した。疾患モデル動物としては、両側総頸動脈狭窄モデルマウスを作製した。この疾患モデル動物に、これまで我々が見出してきた酸化脂質生成抑制剤を投与したところ、両側総頸動脈狭窄により誘導される認知機能障害を有意に抑制することがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、1)酸化脂質分析技術開発、2)疾患モデル動物での方法論の検証、3)酸化脂質がどのような作用を示すのか、の3点を研究項目としている。本年度は、1)の酸化脂質分析技術開発にて、更なる検討を進め、包括的な構造解析が可能となることを示したと共に、2)において、酸化脂質生成抑制により、認知機能障害の悪化を抑制できるをことを見出した。以上の点から、本研究は順調に進展していると考えている。
今後は、酸化脂質の構造解析技術をさらに発展させ、包括的構造解析を実施する。さらに疾患モデル動物での検証並びに、3)酸化脂質がどのような作用を示すのかについて、検討を進める。
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