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2020 年度 実績報告書

プロスタグランジンによる腫瘍免疫抑制:標的細胞とメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H00498
研究機関京都大学

研究代表者

成宮 周  京都大学, 医学研究科, 寄附講座教員 (70144350)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードプロスタグランジンE2 / プロスタグランジンE受容体EP2 / プロスタグランジンE受容体EP4 / 腫瘍微小環境 / 炎症 / NFkB / 制御性T細胞 / mregDC
研究実績の概要

がん微小環境では、炎症と免疫抑制が同時に起こり、前者はがん増殖を助長、後者はがんに対する免疫回避を起こし、相俟って腫瘍進展を促進する。本研究の目的は、マウス同種癌細胞移植モデルを用い、がん微小環境でのプロスタグランジン(PG)E2-EP2/EP4受容体経路の働きをsingle cell RNA sequencing 法を用いて単一細胞レベルで明らかにし、ヒトがんに外挿することである。本年度は、C57BL/6マウスに移植したLLC1扁平上皮肺癌を対象に解析した。その成果は以下である。① LLC1腫瘍でCOX、mPGESなどのPGE合成経路の発現を確認、PGE受容体EP2, EP4が腫瘍細胞でなく、ホスト由来の浸潤炎症・免疫細胞に発現していることを見出した。これに一致して、EP2 阻害薬とEP4阻害薬はホスト細胞依存的に腫瘍増殖を抑制した。②EP2 阻害薬、EP4阻害薬及び両者を投与したLLC1担がんマウスより腫瘍を摘出、CD45陽性浸潤細胞のscRNAseqを実施した。これにより、LLC1腫瘍浸潤細胞が15の細胞集団に分かれること、T細胞はさらに4つの亜集団に分けられることを見出し、各集団でのEP2/EP4阻害による遺伝子発現変化を解析した。③その結果、EP2/EP4阻害が、好中球、マクロファージ、単球など骨髄由来細胞で炎症・血管新生に関わる一連の遺伝子発現を抑制すること、また、mreg DCに働き制御性T細胞 (Treg) 遊走に関わるケモカイン遺伝子発現を抑制、さらに、Tregの活性化に関わる一連の遺伝子の発現抑制も起こすことを見出した。
以上より、PGE2-EP2/EP4経路がLLC1腫瘍微小環境の骨髄系細胞で炎症・血管新生関連遺伝子の発現を介して炎症環境を、mregDC-Treg経路に働きTregを活性化して免疫抑制環境を形成していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

single cell RNA sequencing法が、当研究室で立ち上がり、これを用いて、最初の対象であったLLC1マウス腫瘍の微小環境でのPGE2-EP2/EP4経路の働きの大要を解明し得たことは、当初の計画を超えた進展であったと評価している。

今後の研究の推進方策

第1年度に行ったLLC1腫瘍は、PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬の無効ながんであって、この目的は、がん微小環境で働いているプロスタグランジン依存性で免疫チェックポイントに無関係な免疫抑制機構の解明を目指したものであった。しかし、一方で、PG依存性で免疫チェックポイントと協調して働く免疫抑制機構の存在も示唆されている。今後の研究は、まず、これを解析するに最適なモデルを探索し、これを用いて、LLC1で見出したのとは異なったPG依存性の免疫抑制機構の解明を当面の目的とする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Single cell RNA sequencing identifies a novel LPA-induced THBS1-positive keratinocyte subpopulation that is involved in wound healing2020

    • 著者名/発表者名
      Anh Quynh Ngo, Ratklao Siriwach, Dean Thumkeo, Shuh Narumiya
    • 学会等名
      第138回日本薬理学会近畿支部会
  • [学会発表] New compounds for atopic dermatitis promote selective AHR-induced Filaggrin transcription in NHEK cells2020

    • 著者名/発表者名
      Makio Higuchi, Dean Thumkeo, Shuh Narumiya
    • 学会等名
      第137回日本薬理学会近畿支部会
  • [備考] 京都大学医学研究科創薬医学講座

    • URL

      http://www.mic.med.kyoto-u.ac.jp/dddm/

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公開日: 2021-12-27  

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