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2021 年度 実績報告書

プロスタグランジンによる腫瘍免疫抑制:標的細胞とメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H00498
研究機関京都大学

研究代表者

成宮 周  京都大学, 医学研究科, 寄附講座教員 (70144350)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードプロスタグランジン / プロスタグランジンE受容体EP2 / プロスタグランジンE受容体EP4 / 腫瘍微小環境 / 炎症 / NFkB / 免疫抑制 / 制御性T細胞
研究実績の概要

腫瘍微小環境では活発な炎症と免疫抑制が同時に起こっているが、どうして活発な炎症が免疫活性化に繋がらないかは大きな謎であった。本研究ではマウス同種腫瘍移植モデルを用いて、プロスタグランジンE受容体EP2とEP4経路の腫瘍微小免疫環境に対する作用をEP2/EP4阻害薬によるpharmacological interventionとsingle cell RNA sequencing (scRNAseq)を併用して解明することを目的としている。今年度は、PD-1抗体が無効なLLC1腫瘍の解析を行った。LLC1腫瘍を移植後、12-18日にかけてEP2/EP4阻害薬で処理し治療効果を確認したあと腫瘍よりCD45陽性免疫細胞を回収し、scRNAseqにかけ総計で31,971個の細胞の解析を行った。まず、unbiased clusteringでこれらを15の細胞集団に分け、T細胞集団はさらに4つの亜集団に分類し、これらそれぞれでEP2/EP4阻害による遺伝子発現変化を解析した。その結果、EP2/EP4経路が、一方で、骨髄細胞集団でNFkB経路を活性化して炎症・血管新生関連遺伝子の発現誘導を起こしていること、この経路が、他方で、mreg樹状細胞と制御性T細胞に働き制御性T細胞の腫瘍へのリクルートと腫瘍での活性化に働いていることを見出した。重要なことに、ヒト腫瘍のdata解析により、EP2/EP4経路が上記2つの遺伝子発現に相関しており、予後予測因子として働くことが明らかになった。以上の結果は、EP2/EP4経路が骨髄系細胞での炎症の活性化と制御性T細胞を介する免疫抑制という2つの相反する現象のリンクとして働いていることを示唆するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の特徴は、薬物を用いたpharmacological interventionとsingle cell RNA sequencing を組み合わせてマウス腫瘍モデルを解析し、プロスタグランジンE2がEP2受容体とEP4受容体を介して腫瘍微小環境の免疫細胞に及ぼしている作用をunbiasedに解明することである。今回、LLC1腫瘍モデルの解析をまとめることで、我々のグループでこの手法を完成させることができ、今後、他の腫瘍モデルに応用する体勢が整った。さらに、本研究では、上記unbiasedな解析を用いることで、これまで未知な新しい作用原理を抽出することを目的としているが、この点も、EP2/EP4経路を介する制御性T細胞の活性化というこれまでの理解を改変する結果が得られた。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると評価している。

今後の研究の推進方策

これまでのLLC1腫瘍モデルの解析で一定の成果は得たが、LLC1モデルはT細胞浸潤が少なく、抗PD-1抗体も無効な腫瘍であり、腫瘍微小環境でのEP2/EP4依存性の免疫回避のメカニズムは、全く異なったものもあると思われる。そこで、これまでに樹立した手法を用いマウス4T1腫瘍, CT26腫瘍の解析を行う。両腫瘍ともEP2/EP4阻害で腫瘍増殖が抑制されるが、微小環境浸潤細胞プロフィールなどLLC1とは異なることを見出しており、新規のメカニズムを発見する可能性は高いと考えている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Single-cell RNA sequencing identifies a migratory keratinocyte subpopulation expressing THBS1 in epidermal wound healing2022

    • 著者名/発表者名
      Siriwach Ratklao、Ngo Anh Quynh、Higuchi Makio、Arima Kentaro、Sakamoto Satoko、Watanabe Akira、Narumiya Shuh、Thumkeo Dean
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 25 ページ: 104130~104130

    • DOI

      10.1016/j.isci.2022.104130

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] PGE2-EP2/EP4 signaling elicits immunosuppression by driving the mregDC-Treg axis in inflammatory tumor microenvironment2022

    • 著者名/発表者名
      Dean Thumkeo, Siwakorn Punyawatthananukool, Somsak Prasongtanakij, Ryuma Matsuura, Kentaro Arima, Huan,Nie, Rie Yamamoto, Naohiro Aoyama, Hisao Hamaguchi, Shingo Sugahara, Shinobu Takeda, Varodom Charoensawan, Atsushi Tanaka, Shimon Sakaguchi, Shuh Narumiya
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: accepted ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Prostagalndins in tumor microenvironment as revealed by scRNAseq analysis2021

    • 著者名/発表者名
      Shuh Narumiya
    • 学会等名
      14th Meeting of the Asia Pacific Federation of Pharamacologists
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 免疫チェックポイント阻害剤非感受性LLC1腫瘍に対するPGE2-EP2/4阻害剤の抗腫瘍効果及び作用機序の解明2021

    • 著者名/発表者名
      村田紘規、Thumkeo Dean、成宮 周
    • 学会等名
      第139回日本薬理学会近畿部会
  • [学会発表] 制御性T 細胞に対するプロスタグランジンE2 の作用および分子制御機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      松浦 竜真、Thumkeo Dean、成宮 周
    • 学会等名
      第140回日本薬理学会近畿部会
  • [学会発表] PGE2-EP2/EP4 signaling mediates immunosuppression in tumor microenvironment through the facilitation of mregDC-Treg axis2021

    • 著者名/発表者名
      Thumkeo Dean, 成宮 周
    • 学会等名
      第50回日本免疫学会総会
  • [備考] 京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンター創薬医学講座

    • URL

      http://www.mic.med.kyoto-u.ac.jp/index.php

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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