研究課題
1.本年度は、ヒト乳がん、卵巣がん、大腸がん各5例の手術標本を得て、これよりCD45+浸潤免疫細胞を単離、これをscRNAseqに供し、cluster解析し各クラスターでEP2/EP4発現に連関する遺伝子発現シグナチャーを同定した。その結果、EP2/EP4発現がCD8+T細胞でも骨髄系細胞でも活性化マーカーと相関、反対に、ミトコンドリアで電子伝達を行うOXPHOS遺伝子群や蛋白合成を行うRibosomal Proteins (RP) などc-Myc標的遺伝子群と逆相関することを見出した。3.これを基に、マウスLLC1腫瘍でEP2/EP4拮抗薬投与を行い、拮抗薬添加で腫瘍浸潤CD8+T細胞と骨髄系細胞で、ともに、OXPHOS遺伝子群とRP遺伝子群の発現が有意に亢進すること、このときこれら細胞群で前者の発現制御にあたるPGC1aや後者を制御するc-Mycの発現増加を認めた。4.上記所見をin vitroで確認するために、THP-1およびマウスCD8+T細胞で実験を行い、EP2とEP4がこれら細胞の活性化で発現が誘導されること、ここにPGE2が働くと、活性化に伴うc-MycやPGC-1が抑制されること、CD8+T細胞ではこの作用はPGE2によるIL-2受容体alphaサブユニットの発現抑制によること、この結果、ミトコンドリアでの呼吸とともに解糖系も抑制されること、これが、in vitroでは抗原特異的なtumoricidal活性とchemotaxisの阻害に繋がり、in vivo の adoptive transfer実験では腫瘍抑制活性と浸潤活性の減少に繋がることを明らかにした。5.以上より、ヒトがんに浸潤した免疫細胞は活性化に伴いEP2/EP4受容体が発現されること、これにPGE2が働くことでエネルギー不全、合成不全となり、抗腫瘍活性が損なわれ免疫不全に陥ることが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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