研究課題/領域番号 |
20H00500
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
鍋倉 淳一 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 所長 (50237583)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミクログリア / アストロサイト / 神経細胞 / 慢性疼痛 / カルシウム / 経頭蓋直流刺激 |
研究実績の概要 |
グリア細胞による神経回路再編について 以下について新規の知見を得られた。 1)脳内免疫細胞であるミクログリアの細胞活動を検討する目的で、遺伝子改変Iba1-tTAマウスとtetO-GCaMP6を交配し、カルシウム指示タンパク質CaMP6がミクログリアに特異的に発現する遺伝子改変マウスを作成した。2光子励起顕微鏡を用いて覚醒マウスの大脳皮質のミクログリア内のカルシウム動態をリアルタイムでの観察を行える系を確立した。また、定量解析アルゴリズム(AQuA)を用いカルシウム動態解析を行った。ミクログリア内におけるカルシウム上昇にはホットスポットが存在することが判明した。ホットスポットは細胞体にも存在するが、大部分は突起の存在していた。カルシウム上昇はホットスポットで限局して起こるものが多いが、同部位から近位方向や遠位方向へのカルシウムフローが起こる場合も見られた。カルシウムフローの方向性や拡散範囲は一定でなく、特に突起の分岐部でその先への拡散が制御されていることが判明し、同部位におけるカルシウム動態のバリアの存在が示唆された。 2)難治性の異常痛覚を伴う慢性疼痛の新規治療法の確立を目指して、慢性疼痛モデルマウスにおいて、痛覚過敏慢性期にDREADD法により大脳皮質第一次体性感覚野のアストロサイトの選択的活性化と薬理的(テトロドトキシンの慢性投与)な末梢神経活動の局所ブロックを組み合わせた。アストロサイト活性化と末梢神経活動ブロックを同時に行うと痛覚過敏が長期期に除去された。そのメカニズムを大脳皮質体性感覚野錐体細胞の樹状突起の経時的観察を行うと、慢性疼痛発症時に新生したシナプスが有意に除去されていることが判明した。電気生理学的手法を用いて大脳皮質体性感覚野の神経細胞活動が正常化していることを確認した。現在、アストロサイト活性化の下流にあるメカニズムの探索、および臨床応用に向けた手技の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に挙げたミクログリアと神経回路再編について、ミクログリアの活性制御機構の解明を第一の目標と定め、ミクログリア内のカルシウム動態の観察を可能とする遺伝子改変マウスの構築を行い、突起の伸縮の細胞内基盤であるミクログリア内カルシウム動態の可視化に成功し、細胞内カルシウム動態の時空間的特徴を抽出することに成功し、更に、同カルシウム動態が神経細胞活動に依存している可能性を見いだした。この結果は、ミクログリアと神経細胞が双方向に機能制御を行っていることを示している。 アストロサイトによる神経回路長期再編については、計画課題である慢性疼痛モデルマウスを用いて 病態原因回路の再編成へのアストロサイトの関与について研究を勧め、アストロサイトの活性化による可塑性が亢進した状態で末梢感覚神経活動を抑制すると痛覚過敏回路が正常化することが認められ、新たな慢性疼痛の治療戦略構築が期待できる成果を得ている。コロナ禍の状況で遺伝子改変マウスの構築にやや時間がかかったが、着実な進捗が得られている。大脳皮質体性感覚野の神経細胞電気活動記録に精通している名古屋大学医学研究科和氣弘明教授に研究協力を頂き、同研究室で大脳皮質体性感覚野における電気活動記録を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後はミクログリアに関しては、ミクログリアー神経細胞間の相互シグナル因子、特に神経活動に依存して神経細胞からミクログリアへのシグナル因子の探索をおこなう。 慢性疼痛解除に関しては、臨床応用をめざして、経頭蓋骨電流刺激(tDCS)によるアストロサイトの活性化の最適化を行う、また、異常痛覚形成時に新生した痛覚過敏関連シナプスの動態(アストロサイトの活性化時に除去されるのか?)、さらにはアストロサイト活性化の下流にミクログリアの活性化がみられるのかについて遺伝子改変操作、行動観察および2光子励起顕微鏡による経時的な観察法を組み合わせて検討を行う。また名古屋大学において引き続き脳電気活動の記録を行う。
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