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2022 年度 実績報告書

グリア連関による神経回路長期再編

研究課題

研究課題/領域番号 20H00500
研究機関生理学研究所

研究代表者

鍋倉 淳一  生理学研究所, 所長 (50237583)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードミクログリア / アストロサイト / 神経細胞 / 慢性疼痛 / カルシウム / 経頭蓋直流刺激
研究実績の概要

発達や神経疾患や障害からの回復には脳機能の長期的変化がみられる。その脳内基盤は神経回路の長期的な形態的および機能的な変化である。近年、この神経回路の長期的な変化へのグリア細胞の関与に注目が集められている。これまで、代表者は正常脳におけるグリアのシナプス監視など生体脳におけるグリア細胞と神経回路の関連について2光子励起顕微鏡による生体イメージングを用いて検討を加えてきた。本課題では、脳内免疫細胞であるミクログリア、およびアストロサイトに着目し、グリア細胞による神経回路監視機構とともに大脳皮質の長期再編への関与について検討する。特に、グリア細胞の活動を制御することにより病的状態の解除を試みる。具体的には、代表者がこれまで報告した慢性疼痛時に起こる大脳皮質体性感覚野の神経回路再編へのアストロサイト関与の結果を背景に、アストロサイトを人為的に再活性化することにより固定化した病的回路の可塑性を高めて、病的状態を生み出す病態回路に再編を起こさせ、痛覚過敏の正常化に成功し、その回路メカニズムについて2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング法を適用して明らかにしてきた。また、CMOSイオンイメージングセンサを生体に適用し、神経活動による脳内pHの変化の可視化技術を構築した。これによる癲癇モデルに適用し、癲癇様の活動と脳内pHの時空間変化、アストロサイトの関与を検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

グリア細胞と神経回路再編について、本課題で予定している以下の項目について生体脳において検討を加えている。1)慢性疼痛モデルマウスの痛覚過敏持続時において大脳皮質体性感覚野の人為的なアストロサイトの活性化と末梢の局所麻酔による一時的正常化を行うと、痛覚過敏発症時に新生した痛覚過敏に関連するシナプスが有意に除去され、痛覚過敏行動の除去が長期間維持された。そのメカニズムとして、アストロサイトの人為的活性化の下流にミクログリアに活性化、およびアストロサイトによる痛覚関連シナプスの除去が行われることが判明した。現在、ミクログリアによる痛覚関連シナプスの標識機構について検討を加えている。2)イオンイメージングセンサを脳内に留置して、神経回路活動による脳内pHの可視化をおこなった。癲癇モデルマウスにおいて、神経細胞のてんかん様電気活動に先行して、脳内pHの低下が観られた。薬理学的にアストロサイトの活動を抑制すると、脳内pH低下、および神経細胞の過剰活動が抑制された。更に、この脳内pHの変化は海馬で発生し、大脳皮質に伝搬することが判明した。3)ミクログリアはその突起をダイナミックに動かし、シナプスや神経細胞を監視しているが、その動態のメカニズムについて、ミクログリア突起におけるカルシクム動態の可視化を行った。カルシウム上昇は局所に限定する場合と、局所にとどまらず突起遠位、または近位へフローする場合も観られた。更に、このフローはミクログリア突起の分岐部で制御されていることが判明した。

今後の研究の推進方策

1)アストロサイトによる大脳皮質体性感覚野の痛覚過敏回路の除去には、ミクログリアが関与している結果を得ている。アストロサイトとミクログリアによる痛覚関連シナプス除去の関連について、RNAseqなどによる関連分子メカニズムを解明するとともに、アストロサイトの活性化と末梢神経活動の正常化による痛覚過敏の除去について、臨床医療への応用の検討を行う。2)CMOSイオンイメージングセンサをマルチイオンセンサおよびATPなどの物質センサーとして研究協力者と改良を進めており、癲癇発症に伴う細胞外脳内環境の時空間的変化を多角的に抽出する。更に、発症抑制のため、癲癇発作に先行する脳内環境の変化を抽出し臨床医療への応用のための情報の蓄積を行う。3)ミクログリアの細胞内、特に突起分岐部の構造について、3次元再構築電子顕微鏡法を用いて検討し、ミクログリア突起内のカルシウム動態の構造的特徴を抽出する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)

  • [国際共同研究] University of New South Wales(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      University of New South Wales
  • [国際共同研究] KyungHee University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      KyungHee University
  • [雑誌論文] 特集 慢性疼痛 慢性疼痛とシナプス再編-グリア細胞制御による治療法を目指して2023

    • 著者名/発表者名
      鍋倉 淳一、竹田 育子
    • 雑誌名

      BRAIN and NERVE

      巻: 75 ページ: 207~216

    • DOI

      10.11477/mf.1416202310

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Controlled activation of cortical astrocytes modulates neuropathic pain-like behaviour2022

    • 著者名/発表者名
      Takeda Ikuko、Yoshihara Kohei、Cheung Dennis L.、Kobayashi Tomoko、Agetsuma Masakazu、Tsuda Makoto、Eto Kei、Koizumi Schuichi、Wake Hiroaki、Moorhouse Andrew J.、Nabekura Junichi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 4100

    • DOI

      10.1038/s41467-022-31773-8

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Spatiotemporal Analysis of Microglial Ca2+ Activity at Single-Cell Resolution2022

    • 著者名/発表者名
      Horiuchi Hiroshi、Cheung Dennis Lawrence、Nabekura Junichi
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: 190 ページ: -

    • DOI

      10.3791/64300

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Erratic and blood vessel-guided migration of astrocyte progenitors in the cerebral cortex2022

    • 著者名/発表者名
      Tabata Hidenori、Sasaki Megumi、Agetsuma Masakazu、Sano Hitomi、Hirota Yuki、Miyajima Michio、Hayashi Kanehiro、Honda Takao、Nishikawa Masashi、Inaguma Yutaka、Ito Hidenori、Takebayashi Hirohide、Ema Masatsugu、Ikenaka Kazuhiro、Nabekura Junichi、Nagata Koh-ichi、Nakajima Kazunori
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: 6571

    • DOI

      10.1038/s41467-022-34184-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脳機能とグリア2023

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      鹿児島臨床医学・薬学シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] グリア細胞による神経回路再編:監視と病態2023

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      レドックスR&D戦略委員会 春のシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Long term-remodeling of neuronal circuits in vivo: neuron-glia interaction2022

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      HIGO最先端研究セミナー(リエゾンラボ研究会)
    • 招待講演
  • [学会発表] 大脳皮質神経回路再編:ニューロンーグリア連関2022

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      浜松医科大学大学院特別講義
    • 招待講演
  • [学会発表] 病態における神経回路の再編成:グリアーニューロン連関2022

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      第19回鹿児島ニューロフォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] グリアによる神経回路再編と脳内環境センシング2022

    • 著者名/発表者名
      鍋倉淳一
    • 学会等名
      リエゾンラボ炎症シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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