研究課題
ストレスゲートウェイ(SG)反射では、それ自体では病気を起こさない軽度のストレスが特定の神経回路を活性化し、脳特定血管の変容から当該血管周囲へ自己 反応性T細胞の浸潤を誘導する。その後、さらにその部位の血管周囲に分布する神経回路がATP依存性に活性化し、消化管障害、心機能不全などから突然死が起こる。R3年度は複数の関節リウマチモデルを用いることで、炎症性疾患で遠隔部位に左右対称な炎症病変を生じさせる分子機構の解明に関して大きな進捗があった。関節リウマチ、間質性肺炎、乾癬などの炎症性疾患では、遠隔部位に左右対称な炎症病変が形成され、神経系の関連が示唆されていましたが、その実態は長らく全く不明でした。村上らは、新規のゲートウェイ反射が形成に関与していると考え、関節リウマチモデルマウスを用いて検証し、新規の分子機構である「遠隔炎症ゲートウェイ反射」を発見しました。遠隔炎症ゲートウェイ反射では、関節リウマチモデルマウスの片側の足関節の炎症で生じるATPにより、まず感覚神経、続いて脊髄のプロエンケファリン陽性介在神経の順で活性化し、その後、それに伴って反対側の足関節に分布する感覚神経が活性化しました。その結果、活性化した感覚神経から逆行性にATPが放出され、反対側の血管内皮細胞、線維芽細胞などでIL-6アンプが活性化されることで炎症が誘導されました。すなわち、遠隔炎症ゲートウェイ反射では、ATPが神経伝達物質かつ炎症増悪因子として作用することがわかりました。これらの結果から、遠隔炎症ゲートウェイ反射の神経回路とATPは、関節リウマチ、間質性肺炎、乾癬など遠隔炎症を引き起こす炎症性疾患の治療標的となることが期待されます。
1: 当初の計画以上に進展している
R3年度は上記の結果の他、一細胞RNAseq法の確立、オプトジェネティクスを用いた摂動系の確立、AAVを用いた細胞種得意的な遺伝子改変系の導入、小動物エコーの導入と心機能評価法の確立、テレメトリーシステムと心電図測定法の確立、各種神経マーカープロモーター下にCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスの導入、透明化 免疫染色関節法の確立、ペプチドライブラリーから活性化T細胞の特異抗原を決定するスクリーニング法の確立など、本研究の遂行に必須のシステム導入と方法の確立および発展に取り組んだ。
当初の研究計画に沿って研究が進展していることから、今後も研究計画に基づいて研究を推進し、SG反射の未解明な4ステップ 1自己反応性T細胞の抗原特異性と SG反射病態との関係、2自己反応性T細胞の脳特定血管部への浸潤のための分子機構、3自己反応性T細胞組織浸潤を誘導する神経回路・微小炎症から誘導される 神経回路、4突然死に関連する神経回路と病態誘導機構を解析する。これまでは主に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスにストレスを負荷モデルで解析を行っ てきたが、今後は胸腺除去マウスにもストレスを負荷し、病態や活性化される神経回路、血管ゲートの位置を EAE マウスと比較する。また、胸腺除去マウスにお いてT細胞が認識する自己抗原を決定し、病態や活性化される神経回路、血管ゲートの位置との関連も解析する。さらに5 ヒト検体を用いた G 反射の解析を行 う。突然死、心不全、様々な病気で容体の急変により急死した症例で脳を解析し、脳の特異的な部位での微小炎症の有無、マウスモデルで同定した神経やT細胞、 血管内皮細胞特異的機能マーカーを検出することにより、ヒトでSG反射が存在するかを検証する。最終的にはバイオエレクトロニック医療による特異的な神経回 路の制御からストレス性臓器不全の予防・治療へとつながる革新的な方法論を確立、実現化を目指す。
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