研究課題/領域番号 |
20H00505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 晶 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40312946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レクチン受容体 |
研究実績の概要 |
申請者らはパターン認識受容体に分類されるC型レクチン受容体(CLR)による自己認識機構が生体内の異変に対する有益な恒常性維持機構であると考え、申請者らが新たに発見したCLRと内因性物質との相互作用を対象として、その生物学的意義と分子基盤を明らかにすることを目的として研究を行っている。 高精度分取分析系とCLRを発現した高感度レポーター細胞ライブラリーを連結し、様々なCLRが認識する自己成分の精製に成功した。細胞表面分子に関しては、細胞免疫によってモノクローナル抗体を作製し、レポーター細胞の活性を阻害するクローンを選抜した。当該モノクローナル抗体クローンを用いて免疫沈降を行い、質量分析によってリガンドを同定した。多糖成分に関しては、臓器由来の水溶性画分から複数のカラムクロマトグラフィーを組み合わせて比活性が500倍以上上昇した精製画分の単離に成功し、NMR解析の結果、構造を決定した。糖脂質に関しては、βグルコシルセラミドの蓄積に伴うゴーシェ病モデルマウスを樹立し、その病態にCLRを介するミクログリアの活性化異常が寄与することを見出した。 また、これらのCLRの自己成分認識には種差が認められ、ヒトCLRに強く認識されるリガンドが複数見出された。ヒトにおける病態を再現するため、これらのヒト受容体を発現するCLRヒト化マウス(ヒトCLR BACトランスジェニックマウス x CLRノックアウトマウス)を複数樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の進捗は、当初の研究計画から概ね想定の範囲内で成果が得られており、順調に進展していると判断している。CLRによる新規自己成分の同定に関する令和2年度の進捗は主に以下の2項目である。 1. CLRが認識する新たな自己由来成分を複数同定した。その中には、これまで報告がない新規の構造を有する成分があった。 2. CLRに自己認識に種差があることを見出し、受容体ヒト化マウスを樹立し、ヒト特異的な応答を再現することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
継続してCLRが認識する自己由来成分の探索を進める。既に同定済みの相互作用に関しては、マウスモデルを用いてその生理的・病理的役割を明らかにする。新たに見出しつつある膜タンパク質リガンドに関しては、結合に寄与する糖鎖構造を、LC-MS/MS質量分析、合成糖ペプチドを用いた解析、及び結晶構造解析を通して明らかにする。
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