研究課題/領域番号 |
20H00509
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
長谷 耕二 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (20359714)
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研究分担者 |
田久保 圭誉 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 生体恒常性プロジェクト長 (50502788)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸ー骨髄連関 / パイエル板 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、最も食事の影響を受けやすいと想定される腸管免疫系の絶食応答を解析し、腸管リンパ組織であるパイエル板の細胞数が、絶食時には半数以下に減少する事実を見出した。絶食時には胚中心B細胞はアポトーシスを起こし、胚中心反応は停止することが判明した。一方、パイエル板のナイーブB細胞は絶食時骨髄に移行し、再摂食とともにパイエル板にホーミングすることが示唆された。以上の知見から、腸-骨髄連関(gut-bone marrow axis)という新たな免疫経路の存在が明らかとなった。このようなパイエル板の絶食応答は、免疫応答に伴うエネルギーコストを削減する上で重要であるとともに、胚中心細胞の消失による免疫記憶のリセットといった副次的作用をもたらす。しかし、リンパ球動態を制御する分子基盤、生理的意義、さらには、疾患制御の可能性など多くの課題が残されており、本研究申請での解決を目指す。今年度は経口免疫寛容の誘導における栄養シグナルの重要性を検証した。腸管では無害な食事抗原に対して免疫寛容を誘導する経口寛容と呼ばれる仕組みが存在し、パイエル板が主要な役割を果たしている。絶食時には経口寛容がキャンセルされることが判明した。抗原特異的T細胞の移入モデルにおいて、絶食を施すと抗原特異的なTreg細胞の誘導が起こりにくいことを明らかにした。現在、Tregの増殖制御を担う栄養素の検討を行っている。また、絶食時におけるリンパ球の骨髄移行のメカニズムを調べるために、CXCL13産生細胞の探索を実施した。骨組織を細分化し、定量PCRを行う事で産生細胞の絞り込みに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、経口免疫寛容の誘導における栄養の重要性を検証した。さらに、骨髄におけるCXCL13産生細胞の絞り込みも順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、経口免疫寛容の誘導に必要な栄養素の同定を行うとともに、そのメカニズムを明らかにする。また自己免疫疾患モデルを用いて、絶食-再摂食による疾患予防・治療の可能性を検証していく。
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