研究課題/領域番号 |
20H00511
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小安 重夫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (90153684)
|
研究分担者 |
三澤 拓馬 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20880694)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 自然リンパ球 / 脂肪組織炎症 / 肥満 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
高脂肪食負荷によって短期間に腸管の激しい炎症が誘起され、細胞の回収が極めて困難になることに直面した。これまで使用してきた高脂肪飼料は、総エネルギー中の脂肪由来のカロリー比率が60%(60 % kcal)である日本クレア社のHigh Fat Diet32(HFD32)(通常飼料は10% kcal)とコントロールのCE-2であったが、比較のため、Research DIETS Inc.のD12451(45% kcal)とそのコントロールであるD12450H(スクロース量が同一)を採用した。HFD32に比較してD12451の方が肥満の誘導は緩やかであるが、腸管の炎症は同様に起こることが明らかになった。 マウスの遺伝的背景の違いを検討するためにC57BL/6J(B6J)とC57BL/6N(B6N)の比較を行った。その結果、B6Nの方がB6Jに比較して高脂肪食負荷による肥満の誘導や腸管の炎症が顕著であり、炎症に伴う細胞の回収率がより困難であった。 腸管粘膜固有層のSI-ILC2やILC3を単離し、増殖後に自然リンパ球を欠損するγc-/-Rag2-/-マウスに移植する目的で単離後の細胞をIL-2とIL-7存在下に培養したが、ILC2に比較してILC3の増殖が芳しくなかった。研究代表者の以前の研究からRORγtが分化や機能に重要なTh17は低酸素状態で効率的に誘導されることが明らかになっていたことから、同様にROR&γが重要な機能を果たすILC3においても同様である可能性が考えられた。そこで、種々の酸素濃度で培養したところ、酸素濃度が21%ではILC3はほとんど増殖しなかったが、5%の低酸素状態で良く増殖することが明らかになった。これは腸管粘膜固有層が低酸素状態であることを良く反映していると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に記したように、高脂肪食負荷による腸管の炎症によって細胞の回収が困難な状況にあり、この問題の解決が求められている。一方で、低酸素下における培養で腸管由来のILC3を増殖させることができたことから、解析は進められると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
B6JとB6Nの遺伝的差異を担うのが免疫系の細胞かそれともそれ以外の細胞かを明らかにするために、CD45.2バックのB6JとCD45.1バックのB6N(正確にはB6.SJL)をドナーとレシピエントとした骨髄移植の系を用いて検討する。 引き続き高脂肪食負荷後の腸管粘膜固有層の細胞の回収方法を検討し、ILC2やILC3を含む様々な細胞を用いてRNASeq解析を行いその差異を明らかにしていく予定である。 腸管粘膜固有層のILC3を低酸素濃度下で培養することで十分な数のILC3を確保し、それをγc-/-Rag2-/-マウスに移植することで高脂肪食負荷による肥満の誘導におけるILC3に機能を検討する。
|