研究課題
上皮組織中で頂端-基底極性が崩壊した細胞は過剰に増殖して腫瘍を形成するが、周囲を正常細胞に囲まれると細胞競合によって排除される。これまでの研究では、競合する極性崩壊細胞と野生型細胞の間の細胞動態に焦点を絞って解析が進められてきた一方で、生体内環境がいかにして細胞競合誘発の有無を決定するのかは不明であった。我々は最近、ショウジョウバエ個体内のインスリンペプチドの循環量が上昇した状態(高インスリン血症)では細胞競合が起こらず、極性崩壊細胞が過剰に増殖して腫瘍を形成することを見いだした。さらにそのメカニズムとして、極性崩壊細胞はタンパク質合成能が低下して細胞競合によって排除されるが、高インスリン血症の状態では極性崩壊細胞のインスリン感受性が亢進してタンパク質合成能が上昇し、これにより細胞競合が破綻して腫瘍化することがわかった。そこで本研究では、①極性崩壊細胞がタンパク質合成能を低下させるメカニズム、②極性崩壊細胞が生体内循環インスリンレベルの上昇に応答してインスリン感受性を亢進させるメカニズム、および③タンパク質合成の増大が細胞競合の敗者-勝者逆転現象を引き起こすメカニズムの3点を明らかにすることを目的とした。これまでの本研究において、極性遺伝子scribのノックダウン細胞(極性崩壊細胞)クローンをショウジョウバエ複眼原基にモザイク状に誘導して細胞競合を引き起こし、変異クローン内に任意の遺伝子変異をホモ接合に導入するモディファイヤースクリーニングを実施した。令和4年度は、本スクリーニングで単離した複数の変異系統の遺伝学的解析を進め、上記①-③に関わる分子機構の解析を進展させた。また、ショウジョウバエ個体の細菌感染が極性崩壊細胞のタンパク質合成能を変化させ、細胞競合の勝敗を変化させるという現象を見いだし、その分子機構に関わる分子群を同定することに成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS Genetics
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