研究課題
基盤研究(A)
上皮組織中で頂端-基底極性が崩壊した細胞は過剰に増殖して腫瘍を形成するが、周囲を正常細胞に囲まれると細胞競合によって排除される。我々はこれまでに、ショウジョウバエ個体内のインスリンペプチドの循環量が上昇した状態(高インスリン血症)では細胞競合が起こらず、極性崩壊細胞が過剰に増殖して腫瘍を形成することを見いだしていた。そこで本研究では、インスリンシグナルが細胞競合を制御するメカニズムを明らかにすることを目指した。
細胞生物学
本研究により、高インスリン血症下で極性崩壊細胞がインスリンシグナルを上昇させて腫瘍化するメカニズムの一端を明らかにした。本成果は、高インスリン血症の起こりやすい肥満や2型糖尿病患者のがん罹患率の高さを説明するメカニズムの1つを提供するものと考えられる。すなわち、正常細胞は高インスリン血症によりインスリン抵抗性を獲得するが、がん原性の極性崩壊細胞はインスリン受容体の発現レベルの異常によりインスリン抵抗性が破綻し、その結果過増殖して腫瘍化することが示唆された。