研究課題
脂肪細胞など、がん組織中に存在する種々の間質細胞は、サイトカイン等の刺激によって活性化し、腫瘍微小環境の主要な構成要素であるがん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)へと分化する。これまでにCAFの起源や特性について明らかにされつつあるが、CAFへの分化を決定する分子機構は未解のままである。研究代表者らは、線維芽細胞及び脂肪細胞などの間質細胞にアクチン動態により制御される転写調節因子MKL1を強制発現すると、CAF様細胞へと転換することを見出しており、MKL1がCAF分化を決定するマスターレギュレーターとして働くことを示している。また昨年度までに、悪性度の異なる骨肉腫細胞(AOおよびAXT)の培養上清を脂肪細胞に作用させたところ、悪性度の高いAXTの培養上清を処理した脂肪細胞(AXT-Ad)が脱分化し、CAF様細胞へと転換することを見出した。また、そのプロセスにおいてMKL1の転写活性が有意に増加することも明らかにした。令和4年度では、卵巣癌細胞から分泌された液性因子が脂肪細胞でMKL1を活性化しCAFへの転換を誘導するか否か検討した。その結果、高悪性度の卵巣癌細胞の培養上精を処理した脂肪細胞で種々のMKL1標的遺伝子の発現が有意に増加し、線維芽細胞様へと形態変化しCAFマーカーであるαSMA陽性細胞へと転換した。一方、正常卵巣上皮細胞の培養上精を脂肪細胞に処理しても、特に変化は認められなかった。以上の結果から、がん細胞による脂肪細胞-CAF転換誘導機構は骨肉腫のみならず、普遍的な現象であることが明らかとなった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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