研究課題/領域番号 |
20H00527
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
|
研究分担者 |
佐橋 健太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90710103)
井口 洋平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80790659)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 神経変性疾患 / 球脊髄性筋萎縮症 / 早期病態 / 転写障害 / ミトコンドリア / シナプス / 運動 / TDP-43 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、運動ニューロン疾患のマウスモデルや患者由来iPSCにおけるマルチオミクスやDREADD、脳Caイメージングなどを解析することにより、超早期ライフステージにおけるニューロン変性分子病態とその年齢依存性変化を解明することである。本年度は、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)マウスモデルにおける超早期病態解析を行った。SBMAについては前年度のRNAseq解析結果を踏まえて遺伝子発現や病理学的解析を中心に行った。その結果、SBMAモデルマウスではP1の時点から脊髄運動ニューロンにおける転写因子Restの機能低下がみられ、それが制御するシナプス関連遺伝子群の発現が異常となることが明らかとなった。その原因として、変異アンドロゲン受容体が運動ニューロン核内でRestと結合し、その機能を抑制することを見出した。P1マウスに対するASO治療を行うとP7時点でRestの下流の遺伝子発現が正常化し、さらに13週齢の時点におけるトランスクリプトーム異常も改善することから、超早期のRest関連転写障害がSBMAの病期全体における基盤病態であることを明らかにした。さらに、発症前のSBMAマウスに運動を行うと骨格筋において変異アンドロゲン受容体の凝集が抑制され、その後脊髄においも同様の現象がみられることが明らかとなった。運動負荷による蛋白質凝集抑制のメカニズムを明らかにするため骨格筋のRNAseqを行ったところ、ミトコンドリア生合成に関わる遺伝子の発現が増加していた。一方、ALSについてはTDP-43凝集に関するメカニズム解析を行い、TDP-43蛋白質の新規リン酸化部位を同定した。同部位のリン酸化にNfKBシグナルの活性化が寄与していることを見出すとともに、ALS患者脊髄運動ニューロンにおいても同様の所見がみられることを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SBMAの超早期病態におけるRestによる転写制御異常に加え、運動による変異アンドロゲン受容体蛋白質の凝集抑制という新しい現象も見出すことができた。さらに、その分子基盤としてミトコンドリア生合成が運動により活性化されることが、細胞非自律性機序を介して脊髄の蛋白質凝集抑制につながることを明らかにできた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はSBMAマウスP1~P7におけるRestの活性化が運動ニューロン変性を抑制することができるか、核酸医薬などを用いて検証する。ALSについてはTDP-43の新規リン酸化部位の機能や蛋白質代謝、神経変性に与える影響を解析する。
|