研究課題/領域番号 |
20H00529
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
神田 隆 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40204797)
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研究分担者 |
竹下 幸男 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70749829)
清水 文崇 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90535254)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / 血管内皮細胞 / アストロサイト / ペリサイト / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
研究代表者、研究分担者が開発した相互接着型ヒト血液脳関門三次元モデルは、発明名称「血液神経関門インヴィトロモデルおよびその作製方法」:特許6684413号として令和2年4月1日付で特許原簿に登録された。同モデルは1年間の間に作製条件等の小修正を加え、安定的に作成できるようになった。 神経疾患に治療につながる神経栄養因子は多数発見されているが、ヒトの疾患に応用する際は、血液脳関門という隘路に阻まれて脳内に到達できない。研究代表者はこの問題を克服する1つの手段として、血中から血液脳関門の内側に存在するペリサイト、アストロサイトに直接作用して神経栄養因子などの有用な内在性物質を放出させることで、血液脳関門を破壊することなく神経疾患治療につなげようという戦略をもとに研究を進めた。また、血液脳関門を一時的に脆弱化させる方法の開発も、高分子物質の脳内導入に有効と考え、相互接着型ヒト血液脳関門三次元モデルを用いた研究として並行して進める計画を立てた。同モデルを用いた研究戦略1a:「血液脳関門の脳側に存在するペリサイトとアストロサイトを操作して内在性の神経栄養因子等を放出させる方法を確立する」に関し、一定の成果が得られた。同モデルの上室(血管内腔側)に投与し、下室(脳側)低分子脂溶性物質を2種類(X1、X2)の同定に成功した。両物質ともモデルでの良好な透過性が確認され、モデルを構成するアストロサイトに作用して重要な神経栄養因子であるBDNFの放出促進が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液脳関門三次元モデルが安定的に制作できるようになり、5年間の研究計画の基盤が整備できた点はまず特記すべきことと考える。同モデルの上室(血管内腔側)に投与し、下室(脳側)低分子脂溶性物質を2種類(X1、X2)の同定に成功した点が令和2年度の成果である。その他の研究計画については基礎実験が進行中であるが、具体的な成果は次年度以降に期待されているため、全体的な自己評価としてはおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、血液脳関門の脳側に存在するペリサイトとアストロサイトを操作して、内在性の神経栄養因子を放出させるプロジェクトを継続する。すでに同定した2種類の化合物以外の候補物質の探索を継続するとともに、BDNF以外の神経栄養因子にも焦点を当てた検索を行う。また、相互接着型ヒト血液脳関門三次元モデルを用いて、バリアー脆弱化効果を持つ物質を探索する。この研究の目的は、血液脳関門を一過性に脆弱化し、血管腔内に存在する高分子化合物の脳内流入を促進・制御する手段の開発である。
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