研究課題
(1)代謝と疾患野生型マウスで観察されるHigh Fat Diet (HFD)による肥満と耐糖能の低下が、TFAMを全身性に過剰発現マウスでは大幅に改善された。この表現型はTFAM過剰発現マウスの脂肪細胞を野生型マウスに移植することでほぼ再現されることから、TFAM過剰発現脂肪細胞が責任組織であることを明らかにした。TFAM過剰発現脂肪細胞を分離培養すると、褐色脂肪への分化因子を付加しなくても高効率に褐色脂肪細胞に分化し、この分化促進効果はTFAM過剰発現脂肪細胞培養上清を野生型脂肪細胞に転嫁することで再現できることから、TFAM過剰発現脂肪細胞が褐色脂肪細胞分化促進因子を分泌している事が明らかになり、この褐色脂肪細胞分化促進が肥満抑制と耐糖能改善の機構であることが示唆された。現在その分子機構を解析中である。(2)p32KOマウス(i) ミトコンドリア局在タンパク質p32の遺伝子KOマウスを用いて、p32がCD45-Ter119- CD31- triple-negative 骨髄細胞の赤血球、Bリンパ球への分化に必須であることを明らかにした(2020 iScience)。(ii)心筋特異的p32KOマウスの拡張性心筋症の発症は、オートファジー異常による心筋ミトコンドリア品質低下に起因していた。オー トファジーの異常はオートファゴゾーム形成ではなく、むしろリソソームの機能低下によるオートリソソーム内の分解機能異常であることを明らかにした。p32分子の欠損はミトコンドリア依存性のNAD+の合成低下によるリソソーム膜状に限局したATP合成不全を引き起こし、NAD+前駆体のNMN投与はリソソーム機能を回復させた。これらの結果は心不全の進展における新しい機序と新しい治療戦略の可能性を示唆するものである(2020 EMBO J)。
2: おおむね順調に進展している
(1)前年度までに構築したトランスオミクス的ミトコンドリア機能評価:5台のLC-MS/MSを使い、高感度に1000分子の検出が可能なメタボロミクスの測定系は、2020年度の本研究費に基づく研究成果の多くで、活用されている。そして、ミトコンドリ細胞全体ではなく、ミトコンドリア内代謝を特異的に測定するための高速、効率的に無傷のミトコンドリアを生成する方法を開発し、細胞全体の代謝とミトコンドリア内特異的代謝を区別して測定する系を完成し、その有用性を NAD+の細胞内動態に注目することで示すことが出来た(論文作成中)。 (2)ミトコンドリア関連疾患の予防とその治療に向けた戦略的開発: (i) ミトコンドリア局在タンパク質p32の遺伝子KOマウスと免疫疾患に関しては、自己免疫性疾患である乾癬のImiquimod耳介塗布マウス実験モデルを用いて、p32KOが免疫樹状細胞の抑制を介して、乾癬の発症を強く抑制することを明らかにした(論文作成中)。 (ii)心筋特異的p32KOマウスの拡張性心筋症の発症は、オートファジー異常による心筋ミトコンドリア品質低下に起因していた。オー トファジーの異常はオートファゴゾーム形成ではなく、むしろリソソームの機能低下によるオートリソソーム内の分解機能異常であることを明らかにした。p32分子の欠損はミトコンドリア依存性のNAD+の合成低下によるリソソーム膜状に限局したATP合成不全を引き起こし、NAD+前駆体のNMN投与はリソソーム機能を回復させた。これらの結果は心不全の進展における新しい機序と新しい治療戦略の可能性を示唆するものである。
(1)代謝と疾患TFAM過剰発現脂肪細胞を分離培養すると、褐色脂肪への分化因子を付加しなくても高効率に褐色脂肪細胞に分化し、この分化促進効果はTFAM過剰発現脂肪細胞培養上清を野生型脂肪細胞に転嫁することで再現できることから、TFAM過剰発現脂肪細胞が褐色脂肪細胞分化促進因子を分泌している事が明らかになり、この褐色脂肪細胞分化促進が肥満抑制と耐糖能改善の機構であることが示唆された。その分子機構を培養上清のプロテオミクスおよび細胞外商法の両面から解析する予定である。また、脂肪細胞特異的TFAM過剰発現マウスを作製し、上記のTFAMの効果を確認する予定である。さらに下記の実験の遂行を予定している。(i)TFAM過 発現マウスと老化:全身性TFAM過剰発現マウスの健康寿命伸長や認知機能維持に関与する因子の探索のためにすでに手元にある若年と高齢のTFAM発現マウスを用いて血液や組織の網羅的メタボローム解析を行う。(ii)TFAM発現マウスとアルツハイマー病神経、骨格筋などの組織特異的TFAM発現マウスの作製し、認知機能向上がどの組織のTFAM発現が関与しているかを明らかにする。(2)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とp32:血球特異的p32KOマウスにおける脂肪肝抑制機構の解明に向けて、対照マウスとして肝細胞特異的p32KOマウスを作製し、トランスクリプトーム、メタボローム、プロテオーム解析を行う。(3)マイクロベジクルを用いた 臓器特異的ミトコンドリア機能評価診断システム構築:実臨床検査に 用可能なマイクロベジクル調整法の開発に並行して、現行分離法によるマイクロベジクルを用いて、 様々な組織特異的抗原に対する抗体を用いたフローサイトメトリー解析により多くの臓器の由来細胞同定系を構築する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 1件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件)
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