研究課題
神経変性疾患や心血管系疾患、糖尿病、癌、免疫異常、さらには個体老化などのいわゆるcommon diseaseの発症とミトコンドリア機能異常との関係を明らかにするために、ミトコンドリア機能保護的なTFAMと機能抑制的なp32遺伝子の組織特異的改変により発現量を変化させたマウスを作製し、ミトコンドリア機能異常がその組織に直接的だけではなく、血液循環を介した間接的にも寄与できるのかを解明した。(1)ミトコンドリア内での翻訳反応に非常に重要なp32/C1QBPを心筋細胞特異的にノックアウトしたマウスを作製したところ心不全が進行し約1年で死亡した。つまり慢性心不全マウスの動物モデルとして非常に有用である。この分子機構については、心不全のゆっくりとした進行はミトコンドリアによるATP合成低下が直接の原因でなく、ミトコンドリア機能低下に基づくNAD+の合成低下によって、リソソームの機能低下でオートファジーによる細胞内の品質管理の低下が原因であることを明らかにした。逆に言えば 減少したNMNの投与が改善効果を表すことが示唆された。さらにリソソーム内にて細胞死が誘導されることを見出した。(2) ミトコンドリア転写因子TFAMを過剰発現したマウスにおいてはプレ褐色脂肪細胞はエクソソームを介してオートクライン/パラクライン的に褐色脂肪細胞への分化を促進することを発見した。TFAM過剰発現プレ褐色脂肪細胞を分離培養すると、分化因子の添加なしに高効率に褐色脂肪細胞に分化し、この分化促進効果はTFAMがプレ褐色脂肪細胞からの褐色脂肪細胞分化促進エクソソームの分泌を促進している事を明らかにした。この褐色脂肪細胞分化促進が肥満抑制と耐糖能改善の機構であることが示唆された。TFAMによるエクソソーム分泌促進の分子機構は代謝の亢進によるエクソソームの数の増加であることが解った。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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