研究課題
外的侵襲に対する皮膚免疫応答機構の解明は、アトピー性皮膚炎をはじめとする炎症性皮膚疾患の発症機序の理解のみならず、他臓器での免疫応答の理解に繋がり得る。申請者は、外的侵襲に対して、皮膚内にリンパ様組織構築(Skin-Associated Lymphoid Tissue; SALT)が誘導される事を世界で初めて見出し、inducible SALT (iSALT)と命名した。iSALTの皮膚および全身免疫応答における生理的役割が期待されている。ところが、iSALT誘導機序の詳細や、皮膚免疫応答の多様性誘導機構・全身免疫における役割は依然不明である。そこで本研究ではiSALTの誘導機序の解明を図った。接触皮膚炎を誘導する際に、iSALTが形成されるが、その核となす領域は後毛細血管領域であり、また、この血管内皮細胞は、high endothelial venules(HEV)のマーカーであるDARCを発現していた。その際にリンホトキシン(LT)シグナルを阻害するとHEVの形成は抑制されるが、TNFシグナルを阻害してもHEVの形成は保たれた。また、LTの受容体であるLTbRは後毛細血管静脈(Post Capillary Venules: PCV)付近の血管内皮細胞に存在した。さらに、LTは真皮樹状細胞において発現し、また、樹状細胞を除去するとHEVの誘導は著明に減弱した。このHEV誘導は、接触皮膚炎のみならず、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬マウスモデルにおいても認められた。これらの結果は、炎症性皮膚疾患において、樹状細胞の活性化を契機にLT-LTbRシグナルを介して皮膚のPCVにおいてHEVの誘導を介して免疫細胞が皮膚へ集積させることにより効率良く免疫応答が行われていることを示唆する。実際のヒトの皮膚疾患においても様々な病態においてiSALTが誘導されていることを見出している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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