研究課題/領域番号 |
20H00541
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 秀始 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (10280736)
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研究分担者 |
土岐 祐一郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20291445)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90542118)
谷口 正輝 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (40362628)
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 教授 (60192530)
今野 雅允 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (80618207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エクソソーム / RNA修飾 / 難治がん |
研究実績の概要 |
消化器がん患者由来の生体材料を用いて、病態解析と診断のための新技術を研究した。(1)細胞外分泌小胞の『殻』に存在するがん細胞膜に特異的な抗原を指標にした収集法を開発し、(2)その収集したEVの『中身』のRNAの修飾を直接読む技術に発展させ、膵がんの診断での有用性を示した。これらのがんEV抗原と内部RNAを統合した解析により、バイオマーカー技術の最高精度化をはかりつつ膵がん以外のアンメット・ニーズが高い疾患にまで対象を広げて、病態を踏まえ画期的な創薬に応用できる技術基盤を完成させる計画である。 本年度は細胞外分泌小胞の『殻』に対する特異的な抗体を用いて濃縮を進め、内部に存在しているRNAの質量分析とトンネル電流シークエンスを進め、アデニン及びシトシンに対する新たなメチル化部位とその臨床的意義を明らかにして知財の整備を進めた。このようにEVの『中身』のプロファイリングの技術はバイオマーカーの精度を最高レベルにまで向上させるのに役立ち、診療ガイドラインにおける政策提言のための準備を進めた。さらに明らかにしたRNA修飾に対する酵素のトランスジェニックマウスを作成し、がんの病態と臨床的意義における重要性を明らかにするためのプラットフォームを構築した。特に、令和3年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて緊急事態宣言等発令されたが、研究現場における人流と分業を工夫することによって研究オペレーションとしては計画通りの成果を獲得することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EVの『殻』と『内部』に対する分子生物学的なプロファイリングが計画通り進み、知財の整備と社会実装に向けた企業化、さらに得られた成果物に関するノウハウを論文として公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
①ステージ別予後予測(POC: Proof of Stage Concept): 早期診断では、感度に重点を置いてカットオフを設定し、他の検査法と比較する。またモニターでは、特異度に重点を置いて病態の診断で精度の向上を図る。疾患に応じたRNA修飾の情報は公的データベースに十分に掲載されていないので、本研究ではRNA修飾と全オミックス情報を合わせて解析し、マイニンイングを行い、JSTの公的データベースに登録しデータの共有を促進する。 ②免疫間質の応答(IMR: Immune Mesenchymal Response):内外の研究で、マクロファージのMettl3は、IL7/STAT5/SOCS経路のmRNA修飾によるサイトカイン応答の安定性で左右することが知られている。本研究では、バイオプシー試料のRNA修飾と全オミック情報を用いて、従来では得られなかった間質や免疫細胞の応答を「見える化」して理解し、さらに傾向標識したRNA修飾酵素Mettl3等の過剰発現マウスの組織を用いて個体レベルの各臓器(消化器、皮膚、肺、リンパ組織)で検討する。 ③層別化クラス分類(PAC: Patients Associated Classification):RNA修飾と全オミック情報を統合して解析し、初診時診断、再発診断を実現できる技術を開発する。パイロット研究の結果、マイクロRNAのメチル化をMS法で計測すると、Let-7, miR-17の6位のメチル化(m6A)の増加が消化器がんのリキッド・バイオプシーで早期診断に有用であり、また手術で腫瘍を切除した後に低下することが明らかとなった。
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